ここは先ほどの街道。3車線の道を1台のアッパーミドルクラスのセダンが走ってます。運転してるのは中年の男性。50過ぎくらいか?

 男性はハンドルを握りながらあたりをキョロキョロ。

「どこだ、どこから聞こえて来るんだ、この声は?・・・」

 いや、声はまったく聞こえてないのですが、どうやら男性の耳には聞こえてるようです。

 男性のセダンを数台のパトカーが追い抜いていきました。男性はそれを見て、

「またパトカー・・・ 何か事件が起きてることは間違いないな。この声を発信してる女が関係してるのか?」

 男性は何かを感じました。

「む、またあの声?・・・」

 男性のセダンは交差点を左折。

「こっちだ!」

 そう、そこはヘリコプターに追われた少女が最初に曲がった交差点です。さらに男性が駆るセダンは何回か曲がりました。すると大きなマンションが見えてきました。

「ここだ!」

 男性のセダンがそのマンションの近くに停まりました。セダンを降り、マンションを見る男性。マンションは5階建てですが、面積はかなりありそうです。

 男性は駐車場の入り口を見ました。駐車場は半地下、または地下1階にあるようです。

「あそこか?・・・」

 男性は駐車場に向かって駆け始めました。が、ゴミステーションを通り過ぎたところで急ブレーキ。幅1800mm×奥行900mmくらいの大きさの金属製のゴミステーションです。その側面に大きくて丸い穴が空いてます。男性はその穴を見て、

「な、なんだ、この穴? まさか、ここ?・・・」

 男性はそのゴミステーションのふたを開けました。中を見た瞬間、男性ははっとしました。

 ゴミステーションの中に先ほどの少女の身体が転がってました。少女は気を失ってます。その左袖の布はボロボロ。血が大量にこびりついてます。男性がその左手の袖の先をつまみ、持ちあげました。

「左手が、ない?・・・」

 男性は少女の身体をお姫様抱っこで引上げました。すると大きく破れた布から左腕の切断面が現れました。切断部分は皮膚にきれいに覆われ、棒のようになってます。男性はそれを見て、

「左手は前からないのか? じゃ、この血はいったいなんなんだ?

 ともかくうちに連れて帰ろう!」

 男性は自分のセダンの後部座席に少女の身体を横たえ、セダンを発進させました。


 夜はさらにけて来ました。ここはごくふつーの住宅街。その中のちょっと立派な住宅。

 ここはその家のDK。50歳前後の女性がテーブルのイスに座ってテレビを見ています。実はこの女性、先ほどの男性の妻です。

 ピンポーン! 呼び鈴が鳴りました。

「はーい!」

 女性は立って玄関に向かいました。


 女性が玄関に現れると、そこには少女の身体をお姫様抱っこした先ほどの男性が立ってました。それを見て女性がびっくり。

「あ、あなた、なんなの、その?」

 男性は手を使うことなく器用に靴を脱ぎ、上がりがまちに上がりました。

「さあな、オレもわからないんだ」

 その発言に女性はびっくり。

「ええ?」

 女性は何か不吉なものを感じたらしく、嫌な顔を見せました。


 ここは応接間。今少女の身体が男性によってソファのカウチに置かれました。男性はネクタイを緩めながらふーっとため息。

 少女はかなり苦しそう。ハァハァと荒い息遣い。

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