一方、ヘリコプターの中で狙撃銃を構えてる乗員。この乗員も防御魔法スヴェルクーゲルの光の球体に気づきました。

「ん、なんだ、あの光? まあ、いい」

 再び少女の頭を捉えてるスコープ。と、ここで乗員はスコープから眼を離しました。

「ち、やっぱ頭は狙いたくないな・・・」

 スコープは少し動き、少女の左腕を捉えました。

 ここで操縦してる乗員が、

「おい、あいつ、基地から出ちまうぞ。撃つんなら早く撃て!」

 狙撃銃を構えてる乗員が応えます。

「わかってんよ!」

 狙撃銃の銃爪ひきがねにかかる指が動きました。

 ドキューン! 少女は左腕に激しい何かを感じました。

「へ?」

 下を見ると腕が1本落ちていくところ。唖然とする少女。なんと少女の左腕が無くなってるのです。破れた左袖からしたたり落ちる血。防御魔法スヴェルクーゲルの光はなんの役にも立たなかったようです。

 次の瞬間、少女はとんでもない痛みを感じ、大きな悲鳴をあげました。

「ぐぎゃーっ!」

 少女は姿勢を保つことができなくなり、箒ごと錐もみ状態で落ちて行きます。

 消え消えの意識の中、少女は必死に思考します。

「くーっ、こんなところで死にたくないよーっ!

 自己治癒魔法ハイルングクーゲル!」

 少女がそう宣言すると、少女の身体はまたもや淡いボール状の光に包まれました。先ほどとは違う色の光です。すると破れた袖の隙間から見える少女の左腕の切断面は、あっという間に皮膚に覆われました。

 が、少女には次の危機が迫ってました。巨大な街道のアスファルトが眼の前に迫ってきたのです。基地のフェンスと平行に走る片側3車線の幹線道路です。

「うわーっ!」

 ヘリコプターの2人の乗員が焦ります。

「やばい!」

「あそこに落ちたら、大事故になるぞ!」

 少女は右手だけで箒の先端を掴み、上げました。するとアスファルトに激突する寸前、少女の身体は90度角度を変え、アスファルトと平行に飛び始めました。ヘリコプターの2人の乗員はそれを見て安堵。

「ふーっ、事故にならずに済んだ・・・」

「しかし、よく90度曲がることができたなあ・・・」

 クルマの間を縫うように飛ぶ少女。そのスピードは驚くほど速く、クルマは次々と抜かれて行きます。これを見て道行くクルマのドライバーたちが驚いてます。

「うわっ!」

「なんなんだ、あれ!?」

 少女は真上を飛ぶヘリコプターを見ました。

「ついてくる・・・ あいつを振りきらないと・・・」

 と、少女の進行方向に交差点が。信号は赤。たくさんのクルマが横切ってます。けど、少女の注意はヘリコプターに集中していて、なかなかそれに気づきません。ようやく気付いたときは、交差点はすぐ眼の前。少女はびっくり。

「ええ?」

 ちょうど今右側から巨大なトレーラートラックが現れました。このままだと少女はこのトラックに激突してしまいます。

「くっ!」

 少女はトラックに当たる寸前、急に左に曲がりました。ものすごいスピードを出してるのに、膨れることなくほぼ直角に曲がったのです。そのままトラックと10cm間隔に飛ぶ少女。これを見て2人のヘリコプターの乗員が驚きました。

「そんなバカな!」

「またぎりぎりで曲がりやがったよ!」

 少女は思いました。

「そうだ。曲がって、曲がって、何回も曲がれば、あいつをかく乱できるかも・・・」

 少女は再び左折。今度は細い道に入りました。

 ヘリコプターの2人の乗員。ライフル銃を持ってる乗員が操縦してる乗員に話しかけます。

「おい、絶対遅れんなよ!」

「わかってるって。おまえも絶対眼を離すなよな!」

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