女性は少女を見て、

「あなた、119番に電話した方がいいんじゃない?」

 男性が応えます。

「いや、それはやめておこう。この、何か事情があると思うんだ・・・」

「で、でも、このままだと死んじゃうんじゃ・・・ そうだ、警察を呼んでみては?」

「いや、警察はもっとダメだろ」

「じゃ、どうすれば?」

「このの生命力に賭けてみよう」

「ええ?」

 男性はサイドボードの上の時計を見ました。

「もう10時か。あのバカ常務にドヤされるといけないな・・・ オレは今から今日の報告書を書くよ」

「ええ、あなた、今日はもう遅いわ。明日にしたら」

「バカ言うな! あの常務だぞ。また何か文句言うのに決まってる! あいつの文句はそんぞょそこらの文句とは次元が違うからな!」

「あなた、そんなに嫌なら、あの会社、辞めたら?」

 男性は少し考え、

「ああ、オレも今それを考えてる。あいつ、どう考えたっておかしい。今日だって朝5時に起きて富山のリゾートマンションの工事現場を視察して、その日のうちに帰って報告書を書けなんて、どうかしてるぞ!

 山奥の現場だからクルマで行かなくっちゃいけないのはわかるが、だったらクルマと運転士くらい用意しろって・・・ 長い間お世話になった会社だけど、そろそろ考えないといけないな・・・

 ともかく報告書を書くよ。あとは頼む」

 そう言うと、男性は廊下へ。そして奥の部屋に入って行きました。男性は自分の机に向かうと、ディスクトップ型パソコンで報告書を書き始めました。

 一方女性は、洗面器に水を入れ、さらに氷を入れ、タオルを入れ絞り、それを少女の額に被せました。女性はこれを数回繰り返しますが、突然「はぁ~」とため息。女性はいまいち納得いきません。こんな見知らぬ子のためになんで私は・・・

 女性は少女の荒い息が収まったことを確認すると、立ち、男性が籠ってる部屋のドアをノック。

「あなた、私、もう寝るわよ」

 男性はキーボードを叩きながら、

「ああ」

 と生返事。男性は報告書を書くことに夢中になっていて、少女のことを完全に忘れてしまったようです。男性も極端に疲れてました。報告書を書き終えると、そのままその場で眠ってしまいました。


 それからしばらくして。2階のある部屋のドアがそーっと開き、1つの人影が現れました。どうやらこの家にはもう1人住民がいたようです。

 彼は20歳くらい。髪の毛ボサボサ。中型中背。何かさえのない男性です。男性はつぶやきました。

「誰か、誰か呼んでる・・・」

 男性はゆっくり階段を降り始めました。


 男性が応接間に入りました。そしてカウチに寝かされてる少女に気づきました。

 男性は唾を呑みました。亜麻色の髪の12歳くらいの美少女。ロリコンでなくてもかなり気になる存在です。ま、実際はそれほどの美少女じゃないんですが。

 と、男性の脳に再び声が聞こえてきました。

「お願い、私を、私を抱いて」

 ええーっ、男性はびっくり。「抱いて」その言葉にはいろんな意味がありますが、たいてい女子が男子に言う場合は、「セックスして」という意味。

 この、もしや商売女なのか? パッキンだけど顔は日本人ぽい。髪は染めてるだけ? やっぱ商売女?・・・ で、でも、こんな幼い商売女、日本にいるはずがないよな・・・

 若い男性の脳裏にいろんな妄想が駆け抜けます。

 男性の脳に再び声が。

「お願い、聞こえてるなら、早く抱いてよ!」

 さらに刺激的な言葉が。これはテレパシー? 男性はそれを聞いてさらに戸惑ってます。

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