第21話 じいちゃん
じいちゃんは89歳で亡くなった。
大正15年生まれ。20歳で終戦を迎える。
東京大空襲から命からがら逃げのびて、奇しくも、
それから69年後の3月10日の東京大空襲の日に亡くなった。
60代で、心臓病を患って、一度心肺停止になったが、電気ショックで蘇った。
同じ病室の人は皆先に亡くなった。
しばらくして、今度は、胃ガンの手術をした。胃の3分の2を切除。
それから、今度は軽い脳梗塞を患い、足に障害が残る。
それでも、祖父は生き続けた。
祖父は戦争にはいかなかった。結核と誤診されたからだ。
あの時代、多くの若者が戦地へと消えていく中、どんな思いだったのだろう。
祖父は、しぶとかった。大酒呑みで、喫煙者。病気には負けなかった。
どんなに苦しかったのだろう。祖父は、歩き続けた。
足に障害を抱えても、杖をついて、大きなバックを持って、春夏秋冬の鎌倉を歩き続けた。
その時の祖父は喜寿を超えていた。
一体何が祖父をそこまで、掻き立てたのか。
私は、祖父のようには生きられないと思う。とても祖父のようには強くいられない。
どっちかっていうとすぐに諦めてしまう。
だけど、最後まで生きなくてはいけないんだろうなと、祖父の生涯を見て思った。
どんなに辛くても、その日、その日を生きなくてはならない。
それが、残された者の責任なんだろうなと。
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