第22話始まる悪夢
その日、鈴華はいつもより早く目が覚めた。母が死ぬ夢を見たからだ。自分を襲ってきたのと同じ魔物——ヒュージベアーがその大きなかぎ爪で胸を引き裂き、母を殺すのだ。鈴華は、その場面を直接見た訳では無いが、嫌にリアルで、目からは涙が溢れ、吐き気までしてきた。
はー、前を向こうって決めたのになー、と溜息をつき、頭から追い出す為に着替えてから外に行き、素振りを始めた。
何故か今日は、慧の部屋に行く気分にはなれなかった。
思えばそれは警鐘だったのかもしれない。英雄として地獄のように苦しい運命へ足を踏み入れる鈴華への。
慧が導き、鈴華が辿る、最初の地獄が始まる。
※
「兄貴、命令された場所まで来ました。」
「ああ、あとは魔物が魔鏡を使って、こっちに来るまでの見張りだけだ。」
黒いローブの二人に男が近づいていく。
「ご苦労様です。」
警戒する二人に男は話しかける。
「っ!誰だ?」
「そう警戒しなくても結構ですよ。」
黒のローブの男の一人がホッとした様子で言う。
「兄貴、我々の計画を知っているようです。我々の仲間では?」
兄貴、と呼ばれたほうは警戒を解かず、慎重に男に尋ねた。
「そうなのか?」
それに対して男は————ヘラヘラとブチ切れた。
「笑えないなー、冗談でも、一瞬でも、お前らごときの仲間だと思われるなんて。裏切り者とその傀儡達の一員なんて、死んでもなりたくないよ。」
黒いローブの二人は、一瞬の内に放たれたオーラに固まる。
そして、男が二人の目の前から消え、次の瞬間には斬られていた。そして驚く。男の正体は、この場には、この企みには、似合わない程の大物だった。
「閃風、……宮…崎風……翔」
「お前達の悪巧み、利用させてもらうよ。」
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