第17話鈴華の武器と慧の不穏な思惑

 その日の午後、慧と仲直りをした私は慧に連れられて、派閥の武器庫に訪れていた。


 バスケットボール用のコートくらいの大きな部屋に雑多に置かれている武器の中から慧は斧、籠手、弓、槍、矛を取り出す。


「気になる武器はあるか?」


 そう聞かれたので、小型の武器の方が女の子らしくて良いかなと思いながら武器を見ると…………斧にめっちゃ惹かれた。これは絶対ダメだと思いながらも、手に取るのを止められない。


 慧が笑う。

「君の武器は斧だね。」

「ち、違うから。ちょっと触って見たかっただけだから!」

 と言いながらも心は斧を見て、弾みまくっている。


 それを見て慧が首を振る。


「十英傑は全員、『神』からの恩恵で一種類の武器を完璧に扱えるんだ。その代わり、鈴華が魔法を使えないみたいに弱点も授かっちゃってるけどね。まあそれはともかく、君の武器は斧だ。スキルとの相性も良いし、良かったんじゃないか。」


 それを聞いて、私は思わず叫ぶ。

「良くないんですー‼︎」


 だって、斧って、ムキムキのちっちゃいおじさんがぶんぶん振り回して使ってるイメージだし、斧を振り回す女の子なんて絶対可愛くないじゃないですか。筋肉ムキムキ女とか、いや、実際ムキムキ女な人には悪いですけど、ちょっと……遠慮したいと言わざるを得ませんよ!


 そう慧に伝えると、

「戦いに可愛さなんていらないよ。そんなこと気にしてたら、死ぬよ。」

 と真面目に説教された。


 しかし、そこは譲れない。私も応戦する。

「じゃあ、慧は、スレンダーな感じの女の子と、筋肉ムキムキ女のどっちが良い?」


「それは……、いや、言い方ずるいだろ! 前者はスレンダーとか女の子とか、いい感じの言葉使ってるのに、後者は筋肉ムキムキとか、女とか、明らかに悪印象を与えにいってるじゃん!」


「ほら‼︎ 筋肉ムキムキって聞いて、悪印象だったんでしょ! それこそが慧の本音じゃん。」


「ち、違うし。…………そもそも、そういう問題じゃない! 見た目なんか気にして、相性を無視するなっていう話だろ!」

 そこから数分言い争いになった。


 ——————武器は斧になりました……

 

 



 武器庫を出た後、慧は今日あったことを共有するために、再び風翔と密会する。


「まずは鈴華について。彼女は斧の英雄だった。弱点は魔法が一切使えないこと。」


「なるほど」


「そして……ギルドから依頼が来た。今から一か月後から、かなりの長期間ここを離れることになる。」


それを聞いた風翔は一瞬キョトンとした顔になる。


「は? ふざけてるのか? 僕は君が彼女が自分で十分に戦えるまでの面倒を見ることを条件にしたはずだぞ。それに鈴華ちゃんに懸賞金が掛けられた話も聞いた。無責任にも程がある。」


「仕方ないだろう、アーノルドが人類の存亡の鍵だと言ったんだ。行かない訳にもいかないだろ。──でも、約束は守るよ。」


 風翔が怪訝な顔をする。


「どうやって?」


 慧はふっと自嘲するように笑って作戦を話す。その笑みも語られた作戦も風翔の目には狂っているようにしか見えなかった。


「反対だ! そんなことしたら、鈴華ちゃんが潰れてしまう。立ち直れなくなったらどうするんだ! それに犯罪組織が絡んでいるんだぞ。あいつらは何しでかすか分からん。」


「これが一番効率が良い。」


 風翔はその後数十分反対し続けたが、慧が作戦を改める事は無かった。

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