第12話鈴華の弱点
「慧様、何があったのです?」
ヘイゼルの質問に、うーん、と慧が呻き、しばらく沈黙した後、問う。
「ヘイゼル、魔法が使えない人って、ギルドの記録の中にいる?」
「へ? いる訳ないじゃないですか。」
ヘイゼルさんは何言ってんだこいつと言いたげな顔で慧を見た。
しかし、慧はそれを気にすることなく、
「だよねー、でも魔法欄がすっぽりぬけてたんだよねー。」
と困り顔で言う。
「はい? 鈴華さんの紙にですか?」
そして慧の言葉を聞いたヘイゼルはさっきの表情を解いたと思ったら、一瞬でさっきの表情に戻った。
それにも気づくことなく、慧は、
「そう。鈴華の弱点は魔法が使えない事かな。」
と言った。
数秒、ヘイゼルはどういうことかと黙り込んだがその後、あることを思い出したようだ。焦ったような顔に急激に変わっていった。
「ま、まさか四人目の十英傑⁉︎」
あれ? と慧は惚ける。
「言って無かったっけ?」
「言ってませんよ! 何でそんな重要なこと忘れるんですか。私もギルド長に報告に行かなきゃダメなんですけど!」
ヘイゼルがぶち切れ、慧がごめん、と謝る。
その後落ち着いてから、ヘイゼルは、慧に質問した。
「ですが、魔法を使えないというのは不利すぎる、弱点が大き過ぎませんか?」
「それが、そうとも言い切れないんだよねー……。このスキルのお陰で」
もはや慧は、鈴華の能力を隠す事をやめた。話が進まないからだ。
「『魔力装束』ですか?」
「ああ。誰にも言っちゃダメだよ。効果は、魔力による全アビリティ超強化。魔法にも劣らないレアスキルだろう。良い点は、魔法よりも効率が良いこと。悪い点は、身体強化にしか使えず、汎用性がとても低い所かな? あと、良くも悪くも属性が無い。——まあでも取り敢えず、考えても仕方ないかな。加入手続き完了だよね。」
「はい。和泉鈴華さん、戦士ギルドへようこそ! これから、頑張って下さい。」
「はい!」
全て手続きが完了し、ギルドを出ようとした二人だったが、ちょうどその時、さっき別れたばかりのヘイゼルが後ろから急いで駆け寄って来た。
「慧様っ、ギルド長からのお呼び出しが!」
ギルド長? ここの一番偉い人?
そんな鈴華の疑問をよそに、慧はとても嫌そうな顔をしながら、
「ヘイゼル、鈴華を頼んだぞ。」
と言って、他の職員について行った。
状況を飲み込みきれない鈴華はヘイゼルと共に、再び個室に戻ることになった。
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