第11話ギルドと鈴華のステイタス

 私が交渉に成功した後、私達は街の中心部にある建物に訪れていた。どっしりとした構えの建物だ。


慧は、

「鈴華、ここが戦士ギルドだ。この街の戦士の殆どがここに所属している、これから沢山お世話になるところだよ。」

と話して、中に入る。


中は色んな格好の人で賑わっていて、奥には沢山のカウンターがあった。

 

入った直後は中にいた人達はざわざわと、各々話していたが、慧を見た途端、一瞬静まりかえった。でも嫌がられているっていうよりかは、尊敬されてるって感じかな。


と思ったら、今度は隣の私を見て息を飲んで「「「「可愛い」」」」————ちょ、恥ずかしいんだけど⁉︎……そして今まで以上に騒ぎ出した。


「何あの超可愛い子? 絶技の女?」


「あの絶技に?」


「いや、新規の登録だろ。」


「ということは『アストライヤー』が特例入団を認めたって事? あのかわい子ちゃんがが? あり得ないだろう。」


「じゃあ他国の逸材を引っ張ってきたとか?」


「アストライヤーが目をつける程の逸材で、あんな可愛い子、いなかったでしょ。」


 本当に恥ずかしいから可愛いって言うのはやめて?


 あと絶技っていうのは慧のことだろうか。そう思って、隣でポカンとしている慧に聞いてみる。


 慧によると、渾名があった方がかっこいいっしょ、といってどこぞの戦士に勝手に付けられた渾名だそうだ。


 そしてそんな視線を一身に受けつつ、私達はカウンターに到着した。


 私達が行ったカウンターには小柄の可愛らしい女性がいた。


 慧と、その女性は

「ようこそ慧様、個室の方がよろしいでしょうか?」


「ああ、頼む。」


 と会話して、奥の部屋に三人で行くことになった。


 白で統一されたシンプルな作りの部屋に入り、女性が私達を座らせ、女性は慧の正面に座った。


「私は『アストライヤー』専属のギルド職員のヘイゼルと申します。——この度のご用件は?」


 慧が答える。


「この子、鈴華のギルド加入手続きをしたい。」


「外国からの移住者ですか、それともレベルゼロの方ですか?」


 二人とも勝手知ったるという感じで話を進めていたが、


「レベルゼロだ。」


 それを聞いた途端、ヘイゼルさんの目が大きく見開かれる。


「まさか、特例ですか⁉︎————まあ、それは置いておくとしましょう。慧様、能力開放をしますね。」


 ヘイゼルさんは思わずといった感じで大声をあげたが、さすがはプロといったところか、すぐに切り替えて慧に確認した。


 それに対し、慧は頷く。


「お願い。あと、基礎知識の説明も。」


「かしこまりました」


 ヘイゼルさんはいくつかのイラストが描かれた書類を取り出し、時折それらを指差しながら私に戦う上での基礎知識を教えてくれた。


「人間は、この機械によってその人の眠っている力、魔力と神力を使えるように解放し、魔物達に対抗しうる力を得ます。

 魔力は魔法を撃つ時、また、身体能力を向上させることにも使えます。魔物も持っているので、魔物も魔法を使えます。

 神力はスキルを使う時に使います。これは魔物は持っていません。また、魔法は属性があり、スキルは属性が無いという違いがあります。

 次にレベルです。戦ったり、戦の指揮を採ったりすると、使った能力を中心に、全能力と、魔素、神素の最大保有量が上がります。それを数値化したものがレベルです。十の倍数へのレベルアップは難しいので十を超えたら一流、優秀な戦士だと言われています。鈴華さんは特例ですが、大抵の派閥が入団条件レベルを十以上と定めているのはこのためです。

 さっきの機械を使えば、レベルと、魔素・神素の最大保有量、持っているスキルと魔法の詳細が分かります。

 ————ということで説明は大体終わりました。慧様、能力解放にいきましょう。」


 ヘイゼルさんと慧に連れられて、今度はさっきのイラストの機械がある場所に行き、言われた通り手をかざした。すると下から紙が出てくる。


「鈴華さん、個人情報なので、私に見えないように見てください。レベルと、魔法、スキルの欄があると思います。能力解放の段階で少なくとも一つは、初期魔法が現れる筈ですから、それも確認してください。」


 そういう情報管理はしっかりとしているのか。私も、気をつける必要があるかな。


 そして、言われた通りに紙を見た。真っ白な紙に、文字が横書きで並んでいる。上から名前、レベルゼロ、ステイタス欄、スキル『魔力装束』とその内容が載っていた……あれ?——慧に近づき、耳打ちする。


「ねえ、魔法の欄、無いんだけど」


 慧は怪訝な顔を浮かべる。


「はい? ちょっと見て良い?」


 私が頷くと、慧は私の紙を見た。そして上を見上げ、数秒固まった後、ヘイゼルさんに言った。


「もう一回、個室に戻らせて?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る