第20話 部隊編成

「ここにきてスナイパー!? しかも持ってる武器がSR-25Mかよ!」


「スナイパー……」



 次も戦車が出てくるのかと思っていた二人は、予想外の狙撃手に困惑していた。



「スナイパーって、戦車と同じくらい強いものなのか?」


「確かに、優秀な狙撃手によって戦況が左右されることはある。SR-25Mはバリバリのスナイパーライフルだし、装備がそれしかないってことは狙撃に特化した兵士なんだろう。だけど……」


「なんだ?」


「戦車の後に、急にスナイパーは違和感がある。なにか基準でもあるのか?」


「確かに、今まで深く考えなかったけど……」



 ハルトはウインドウを開き、今までのレベルアップで獲得した武器や召喚を確認する。ソウタも横から覗き込み、一緒に思考を巡らせた。



「う~ん……レベル1から5までは武器の追加だな。6から9までは兵士の召喚。10から13までは装甲車両、14で大勢の兵士が召喚できるようになってる」


「ああ」と、ハルトが頷く。


「15から17までは戦車で18はスナイパー……ある程度、関連性があるものがまとまって出てきてはいるけど……」



 ソウタが考えあぐねている時、ハルトがあることに気づいた。



「あ!」


「どうした、ハルト?」


「ステータスの下に『部隊編成』って項目がある。前は無かったのに」


「部隊編成? 自由に部隊を選べるってこと?」


「たぶん、そうだと思うけど」



 ハルトは『部隊編成』をタップし、なにができるか色々試してみる。



「一定の単位で兵士をまとめられるようだ。召喚もその単位で出せるみたいだから、便利ではあるな」


「軍隊の部隊編成か、ちょっとワクワクするよな。さっそくやってみてくれよ!」


「部隊編成って、決まりみたいなものはあるのか?」


「まあ細かく言えばあるけど、ゲームなんだから好きにやればいいと思うぞ」


「そう言うなら……」



 ハルトは部隊を好きにまとめてみる。戦車部隊に、装甲車部隊、兵士も二組に分け、スナイパーを中心にした部隊とロケットランチャーを持つ部隊に分けた。



「なんか兵士の人数によって、《分隊》とか《小隊》とか名称が変わってくるぞ」


「ああ、それな。10人前後が分隊で、30から60が小隊、60から300ぐらいが中隊だ。その上となると、大隊、連隊、旅団、師団なんかがある」


「ふ~ん」



 ソウタの意見も聞きながら部隊編成を完成させた。



【スナイパー部隊】《小隊》

 狙撃手(一等兵)10名 兵士(一等兵)20名


【砲撃歩兵部隊】《分隊》

 兵士(二等兵)15名


【装甲車部隊】《小隊》

 82式指揮通信車 軽装甲機動車×2両 73式小型トラック×4両

 輸送防護車

 兵士(二等兵)24名


【戦車部隊】《小隊》

 戦車(M1A2型) 戦車(レオパルト2A6)×2両 

 戦車(10式)×4両 

 乗務員24名



「おお! 軍隊として様になってきたな」



 ハルトも納得したように頷いていると、自分の名前に変化があることに気づいた。



「あ! これって……」


「ん? どうした?」



 ソウタが眉を寄せて、ウインドウを覗き込む。そこに書いてあったのは――



 碓氷ハルト 称号【中隊指揮官:少佐】



「えええ!? ハルト! 少佐になってるじゃん」


「うん、そうみたいだ」


「いや、冷静だな。これって名誉的なものなのか? それとも、なにか意味があるのかな?」


「ちょっと待ってくれ」



 ハルトは【中隊指揮官:少佐】の表記をタップしてみる。すると詳細を説明するようなページに飛んだ。



 ステータス補正 


 軍曹 MP   5%向上

 少佐 MP  10%向上

 中佐 MP  20%向上

 大佐 MP  40%向上

 少将 MP  80%向上

 中将 MP 160%向上

 大将 MP 320%向上

 元帥 MP 640%向上



「なんだコレ!? すげー! 元帥げんすいになると魔力が6倍以上になるのか?」



 ソウタは目を丸くして驚いていた。ハルトもまじまじと補正値を眺める。



「俺は今〝少佐″だからMPが10%上がるのか……確かにステータスのMPに補正がかかってるみたいだ」


軍人アーミーにはこんな設定があったのか、『小隊』が三つ以上あると『中隊』になるからな……なるほど、だんだん分かってきたぞ」


「MPが上がるのはありがたいけど、エーテルを買えば魔力は回復できるから、そんなにメリットにはならないんじゃないか?」


「いや全然違うぞ、ハルト! お前は、なんにも分かってないな」


「なにが違うんだ?」


「イベントやクエストによっては『アイテム制限』ってのがあるんだ。持てるアイテムが限られてくるから、もともと持ってるステータス値は重要になってくる」


「そうなんだ」


「それに、今はまだ無いみたいだが『必要召喚MP』が自分の最大MPを超えてくるケースもこのゲームではよくある」


「召喚したくてもできないってことか?」


「そう、特に強力な召喚獣であればあるほど、必要となるMPは多い。そう考えるとMPが大量にあるってのは、それだけで凄いアドバンテージなんだ」



 ハルトはなるほど、と納得して、改めて自分についた【称号】を見る。これからは召喚できるようになった兵士の〝数″にも気を配らないと。


 二人は一旦『神樹の森』の外に出て、弾薬を使い切った武器をリセットする。


 再び森に入り、イヴィル・フォレストに出会うため歩き回った。すると――


 大地が揺れる。木々がざわめき、枝に留まっていた鳥が一斉に飛び立つ。


 蠢く巨木。二体のイヴィル・フォレストがハルトたちの行く手に立ちはだかる。



「二体いっぺんか……いけるか? ハルト」


「ああ、多分な。召喚! 戦車部隊!!」



 目の前に七両の戦車が現れる。中心に〝エイブラムス″、その両脇に一両づつレオパルドが睨みを効かせ、さらに両脇に二両づつ10式が待機する。


 ソウタが言う通り、10式は他の戦車より一回り小さい。だが主砲には44口径120mm滑腔戦車砲が搭載され、副武装も他の戦車に劣ることはない。


 七両の戦車は、向かって右にいるイヴィル・フォレストに砲門を向ける。


 巨大な木の魔物はバリバリと根をうねらせ、枝葉を揺らしながら向かって来た。



「全車、砲撃!!」



 七つの砲門が一斉に火を噴いた。

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