第4話 アサルトライフル

「よし! 墓所でアンデッドを撃ちまくろうぜ」



 意気揚々と歩くソウタについて行くハルトだったが、アサルトライフルをどう使うのか、さっぱり分からなかった。


 色々な部分をガチャガチャと触っていると、見かねたソウタが説明してくれる。



「こいつが弾倉マガジンだ。ライフルの横についてるマガジンキャッチボタンで取り外しができる。撃つときは右にあるセレクターを動かす」


「セレクター?」


「このつまみだよ。動かすことで弾の出方が変わるんだ」



 ソウタが指さしたのは、銃身の右側についた部品で、回して動かすことができた。そこには『ア』『タ』『3』『レ』と四つの文字が書かれている。



「ここに書かれている文字。『ア』が安全装置、『タ』はセミオート、『3』は3点バースト、『レ』がフルオートだ」


「待て、待て、全然分からん!」



 ソウタはポリポリと頭を掻き、「やれやれ、そこからか」と小声で愚痴る。



「いいか、安全装置にレバーを入れておけば弾が発射されることはない。これは今まで使ってた拳銃にもある」



 ふんふんと頷きながらハルトは耳を傾ける。メモが欲しい所だが、手元にはない。



「拳銃と違うのが、その他の機能だ。セミオートは弾を一発づつ撃ち、三点バーストは、一度トリガーを引くと三発連続で弾が発射される」


「それは便利だな」


「そんで最後にフルオートだが、トリガーを引き続ける限り、弾がありったけ発射される機能だ。火力は凄いが、あっと言う間に弾が無くなるぞ」


「じゃあ、どれを使ったらいいんだ?」


「まあ、初心者なら三点バーストかな。実戦ではあまり使われないが、アサルトライフルに慣れるまでは丁度いいだろう」



 その後も細かい使い方やライフルの構え方などを教えてもらい、アンデッドが待つ墓所に入る。


 相変わらず墓の下から湧き出す死体。リアルで不気味だが、いい加減慣れてきた。


 ソウタに教わった通り、セレクターレバーを『3』に合わせ、ボルトを引き、バットプレートを右肩に当てて銃を構える。


 迫ってくるアンデッドに狙いを定め、引き金を引いた。


 三点バーストにより発射された三発の銃弾。薬莢が空を舞い、激しい音と振動が腕に伝わってくる。やや銃身がブレるが、問題なく命中した。


 拳銃より遥かに強いライフル弾、アンデッドの脆い体が弾け飛ぶ。


 体には大きな穴が開き、顔は原型がないほど破壊された。1体が倒れても、次から次へとアンデッドが向かってくる。


 ハルトは怯むことなく銃口を向け、引き金を引く。1アクションにつき一体。


 確実に敵を仕留めていった。弾倉が空になる頃には10体のアンデッドを屠る。


 ハルトは弾を撃ち尽くした『89式5.56mm小銃』を地面に放り投げ、代わりにホルスターから『ベレッタ92F』を抜く。


 両手で構え、更に向かってくるアンデッドに発砲した。


 放たれた弾丸は、的確に相手の頭を撃ち抜き、HPを削り取る。


 ベレッタ92Fは、コルトガバメントより反動が少なく、弾数も多いため使いやすい銃だとハルトは思った。十五発で四体倒したが、まだまだ敵は尽きない。


 ベレッタを右のレッグホルスターに戻し、腰のホルスターからコルトガバメントを抜く。襲いかかってくるアンデッドを見ても、ハルトは落ち着いていた。


 絶対に外さない距離まで待ち、ヘッドショットで確実に仕留める。


 三体倒した所で戦闘をやめ、墓所を出た。



「ふー、けっこうな数を倒したな」


「ハルト、銃を撃つのも様になってきたな。ゲームにはまってきたんじゃないか?」



 嬉しそうに笑うソウタの横で、ハルトもまんざらでもない表情をする。


 普段やらないゲームだが、ハルトは少しづつVRMMOを楽しみ始めていた。その後も墓所に入り、アンデッドを倒し続けた結果、レベルは4にまで上昇する。


 ソウタと二人で、ウインドウを覗き込む。『Weapon addition』をタップして入手した武器を確認すると――



「おおっ! 20式5.56mm小銃!!」



 ソウタの大声に、ハルトは眉を寄せる。



「なんだ? また銃か?」


「ああ……これもアサルトライフルだ。ただし89式より性能は上だと思うぞ」


「そうなんだ。だとすると――」


「間違いない! レベルアップするごとに性能の高い武器がもらえるんだ。普通武器は金を出して買わなきゃいけないのに、武器も弾薬もタダで手に入るなんて、常識外れもいいところだぞ!」



 少し憤慨したように言うソウタの顔に、ハルトは笑ってしまう。さっそく実物を見ようと『20式5.56mm小銃』の表記をタップし、銃を顕現させる。


 ヴゥンッと低い音を立て、目の前に現れたアサルトライフル。


 見た目はやや厳ついが、89式よりもコンパクトだ。銃身の下に持ち手があり、左側面にセレクターレバーがついていた。



「使い方は89式と、そんなに変わらないと思うぞ」



 ソウタの言う通り、各部の構造は同じように見える。実際構えてみると、グリップの握りやバットプレートの感触は、89式よりしっくりくる。



「20式5.56mm小銃は、自衛隊が89式の後継として正式採用したもので、操用性が向上し、より実践的になってるはずだ」


「じゃあ、またアンデッドで試し撃ちして……」


「いや、アサルトライフルが二丁もあるなら、もっと強い魔物でも倒せるはずだ。場所を変えよう」



 ソウタは自分のウインドウを開き、アイテムの一つをタップして取り出す。それはキラキラ輝く青い羽だった。



「〝サファイアの羽飾り″。自分が今まで行ったことのある場所まで瞬間移動させてくれるアイテムだ。これを使って中級者レベルの狩場まで行こうぜ!」


「いいのか? まだ『始まりの村』にも行ってないのに」


「いいんだよ。シナリオ通りにゲームを進めるもよし、別のことをしてもよし! その自由度の高さが【剣と魔法のクロニクル】の良さなんだから」


「そうか……それなら行ってみようか」



 ソウタはニンマリと笑い、持っていた羽飾りを地面に叩きつけた。砕けると光が溢れ、二人の足元に大きな魔法陣を描く。



「うわっ!?」



 光に包まれ驚くハルトだが、次の瞬間――


 木々が生い茂り、鬱蒼とした森の中に二人は立っていた。

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