第2話 シンゴ、父さんを超えたか…

「たっだいまーっ!」


「あらチサト。その子が例の子ね?」


「そうよリサコ。この子が司令の息子、石定シンゴ君」


僕は恥ずかしがり屋さんなので、チサトさんの陰に隠れていたが引っ張り出された。

リサコと呼ばれたお姉さんは白衣を着ている。医者?技術者?どっちだろう…


と言うか!白衣しか着ていないじゃん!!


「ちょっとリサコ!シンゴ君がガン見してるわよっ」


「別にいいじゃない。減るもんじゃないんだし? …あ。シンゴ君、私は黒木リサコ。ここで技術者として働いてるわ。よろしくね」


「石定シンゴです。よ、よろしく…」


握手を求められたから僕は応じた。


"ブルンブルン"


スライムの突起物は薄茶色。新種かな?


「シンゴ君、早速で悪いんだけど石定司…お父さんに会いに行くわよ?」


ふーむ…スライムの核なのに、包み隠さず天辺に据えるとは…。ん?吸える?


「シンゴ君?」


「?! い、今からですか?」


「ええ。今から」


「すぐに?」


「そうよ」


「ちょっと待って下さい! ナニがズボンに擦れて歩き難いn


「思春期ねー」



♦︎



エレベーターとエスカレーターを使い、僕達は更に下へ下へと向かった。


下りのスロープを歩いていると、『えっほ!えっほ!』と声が聞こえてくる。

ここは十字路。掛け声は右の通路からだ。


…えっほ!…

…えっほ!

「えっほ!えっほ!えっほ!…あ!鏑木1佐っ!」


"ドシャア!"


籠屋の衣装を纏う二人組の男。前を担ぐロン毛の奴が籠を離して敬礼をとったので、籠は横倒しだ。


「茶葉君、またなの?」


「ええ…。コイツの残念っぷりときたら…」


『見ての通りですよ。』と、首を振る。


「…いた…い」


籠から女の子が這い出してきた。見た感じ僕と同い年くらいの女の子だ。

身体中に包帯を巻き、目には眼帯をしている。


「シンゴ君紹介するわ。この子は白波レイ。ラバーデリオンの隊員よ」


「ラバーデリオン…? それって何ですか?」


僕は聞いた事ない単語に興味を惹かれた。

貧乳包帯娘には興味が湧かない。


「その辺りは…ね、直接石定司令に聞いた方がいいわ。…茶葉君、レイを医務室へ運ぶのをお願いするわね」


「御意」


白波を籠に押し込め、また『えっほ、えっほ』と籠屋が仕事を始める


「この先に貴方のお父様がいるわ」


十字路突き当たり、僕達が歩いている直線上に漆黒の扉があった



♦︎



「あー!クソッ。アームが弱過ぎないか秋月?!」


「あまり強くしたらシンちゃん人形の首が取れるぞ。いいのか?」


「むう…。それは困るな。 ーーつ?! なぜここにいるシンゴっ?!」


久しぶりに対面した父さんからの言葉。

父さんはUFOキャッチャーに夢中になっていたが、僕に気付いたようだ。


「な…何故って? 久しぶりなのに、あんまりな言葉じゃないか!…このお姉さんに頼んで連れて来てもらったんだよっ」


「本当か鏑木1佐?」


「はい。私がシンゴ君を連れて来ました。私の独断です」


瞬間、父さんの片眉が上がる。機嫌が悪くなったみたい。父さんの癖を知る僕なら当然だ。

このままだとチサトさんは父さんから激オコされてしまう…


なんとかしなきゃ!


「父さん。…僕からお願いしたんだ!チサトさんは悪くない」


「何故だシンゴ!お前はまだ学生だぞ?!わかってr


「父さんが何かやってたのは薄々気付いてたんだ! きっと母さんの事だよね?! 僕も父さんを手伝って……母さんを捜したいんだよっ」


「……お前にはまだ早い」


「どうして?! さっき僕と同じくらいの女の子をみたよ。あの子、デリオンの隊員?だよね。僕もそのチームに入りたいんだ!」


そしたら父さんの仕事が手伝え、母さんの居場所だって…


「剥けてないお前には無理だ!」


「僕は仮性だよ!剥けてないのは父さんじゃないかっ!!」


?!


「お前の負けだよ石定」


「秋月…。……そうか。シンゴ、この父を超えたのか…。

ならばシンゴ、今よりデリオンの隊員だ。だが三番目というのは気に入らん。お前のコードネームは初号機だ」


「石定司令?! 初号機はレイではないですか!」


「黙れ鏑木1佐!! シンちゃんが三番目の筈がない。シンちゃんは一番なーのー!」


「……。」


「親バカか石定?」


「レイと二号機は鏑木、お前に任せる。シンゴ拘束アーマーと武器をーー



ビー

ビー

ビー



突如アラームが鳴る


『石定司令!ヒトです』

矢吹マーヤから報告があがる


「クソっ! こんな時に!」


「慌てるな秋月。シンちゃんがいるじゃないか」


「石定? シンゴ君はチュートリアルも済んでないんだぞ?勝てると思うか?」



「やってみなくては分からんさ。…シンゴ、やれるな?」



「はい!」



「よし。総員第一種戦闘配置! コードネーム初号機ゆけっ!!」


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