滑舌が・・・
滑舌がすごぶる悪い。それを知ったのが、悲しいかな社会人になってからなのだ。しかも母から、
「あなた、子どものころから舌ったらずだったわよ。」
と言われたのである。早く言っておくれよとショックを受けた。
噛み合わせも悪かったので、社会人になってから歯科矯正をしたのだが、治ると言われた滑舌は一向に治る気配なし。それどころか 逆に、誤解を招く原因になったりもする。
以前の職場で、夕方ミーティングがあり、時間前に会議室に行くと上司2人のうち、1人がまだ来ていなかった。
「桜井さんはまだかな。」
と上司の柴原さんに聞かれた私は、
「桜井さんの夕方の予定表には、ヒコウカイとなってました。」
と答えた途端、柴原さんは急いで部屋を出た。慌てて私は柴原さんを追いかけた。何が起こったか、訳分からずとにかく追いかけた。
「僕はこっちを探すから、君はあっちを探して。」
柴原さんはそう言うと、いつになく機敏な動きで会議室のドアを一つ一つ開けて中を確認していった。
(えっ。この人何やってんねんな。まだ時間前なのに。この状況をどう理解すれば。。。)
一通り会議室の確認を終えた柴原さんが戻って、
「そっちは桜井さんいた?」
「ミーティングまでまだ時間ありますので、部屋で待ちませんか。」
と私がいうと、???という表情の柴原さん。そこへ
「あら、まだミーティング時間じゃないよね。まだ大丈夫よね。」
と外出先から帰って来たばかりという感じで桜井さんが登場した。
「あれ、桜井さん夕方から福岡出張に行かれるんじゃないですか?」
「えっ。今日はミーティング終わったら帰りますよ。」
「フクオカって言ってたよね。」
と柴原さんが私に向かって、確認するように聞いた。
「あっ、もしかしてヒコウカイですか。」
「えっ。何?」
「ヒ・コ・ウ・カ・イ」
「あ~、非公開ね。ごめんごめん。福岡って聞こえたよ。だから慌てて探さなきゃって、焦ったよ。」
柴原さんは、社内でも怖がられてる上司だったので、この時なぜ平穏無事に私が帰還できたのか、いまだに不思議だが、とにかく顛末が分かって3人で笑ったことは、今でも冷や汗ものの思い出として記憶している。
それにしても、ヒコウカイとフクオカじゃ、字数も違うのに。。。私の滑舌もレベルが半端ない。
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