エピソード33 バイト探しは王都ウォークで
のぼりはじめた太陽の光が窓から差し込みオレは目を覚ました。
(今日は快晴だな)
窓を開けて、身体を目覚めさせる。
そして肺が大きく膨らむぐらい空気を目一杯吸い込みながら外の景色を見てみると、住宅街の人々が朝から洗濯や調理等で住宅のあちこちで忙しなく動いていた。
このザワザワした生活音が、オレの部屋まで漂ってきた。オレはこの生活音が悪くはない、シェリダン領の事を思い出すので懐かしい気持ちにさせられる。
「ヒューゴは元気にしてるかなあ。友達が出来たと伝えたら絶対喜ぶだろうな」
そして、太陽はゆっくりと顔を現し、まだ薄暗かった建物を光です染めていった。
「クライヴ。起きてるかい?」
この少し高い声はモーガンだ。
「起きてるよ。モーガン」
そう言いながら、オレは
「クライヴも着替えが済んでるみたいだね。それじゃ午前中に活動するから朝食を食べに行こうよ」
モーガンは、ベージュのチュニックにまさかの萌え袖! 黒いズボンを履いていた。
え? 何その可愛さ! 狙ってるの? ねえモーガンは可愛いと言われるのを狙って着ているの?
そして部屋から出て一階に降りようとしたらモーガンに呼び止められた。
「クライヴ? フィーネやリアナは待たないの?」
「流石に朝から女の子達の部屋に行くのもなあ……色々準備とかあるとおもうし、先に行こうぜ」
モーガンを説得して俺達は食堂に向かった。
「「おはようございます!」」
ここの料理人さんは朝からエネルギーが凄い、というか王立学院専属シェフに向けて日夜必死に腕を磨いているんだろう……
オレは一度呼吸を整えてから、今日の朝食のメニューを確認した。
「なになに今日のメニューは………………」
【グランドマザーによる黄金の恵みの大地の上で、ヨッ! 一周してみなよ良い予感しかしないからさ】
もう一つは【すみません私用で辞めます。もう無茶振り過ぎて大混乱です店長! こんな事が来るとは、さらさら思いませんでした】
どうしよう。何が出てくるのかさっぱりわからない……
最近ますます料理長のメニューに対するネーミングセンスに力が入っているような気がする。
そこじゃなくて、若手料理人達の教育に力入れろよ!
とりあえずカウンターの人に【グランドマザーなんとか】を頼み、モーガンはもう一つの方を頼んだ。
しばらくするとフィーネ達がやってきた。
「おはよう。二人とも早いね」
よそ行きフィーネモードだ。
「おはよう。ぼく達よりも早いなんて、今日の日を楽しみに待っていたんだね。さぁフィーネ! ぼく達も朝食を選びに向かおうか!」
相変わらず朝からカッコいいリアナだったが、フィーネがリアナの腕を掴み、静止した。
「リアナ、クライヴたちのメニューを見てから考えましょう。それからでも遅くはないわ」
流石フィーネ、このシステムの穴をもう理解しているなんて……メニュー名が罠からない場合は相手のメニューを見る事で優位に立てる。オレは知っているぞ、フィーネが一瞬カウンターのメニュ表を見ていたのを!
そしてタイミングよく鐘が鳴ったので、オレとモーガンは朝食を受け取りテーブルについた。
お互い一言目に同じ言葉を発した。
「そうきたか」
「そうくるんだね」
オレが頼んだ【グランドマザーによる黄金の恵みの大地の上で、ヨッ! 一周してみなよ良い予感しかしないからさ】は、
簡単に言えばフルーツグラノーラ的なやつだ。
そして、モーガンのは【すみません私用で辞めます。もう無茶振り過ぎて大混乱です店長! こんな事が来るとは、さらさら思いませんでした】は、
簡単に言えば、魚の塩焼きに、ブリ大根にサラダの組み合わせ的なやつだ。
その後フィーネとリアナはグラノーラを選んだ。
お腹も満たされて、今日の予定を再度確認しようとモーガンが言った。
「クライヴとフィーネは
「はーい」
「わかったわ」
「任してくれ」
改めてモーガンって人をまとめるの上手だよな。
「フィーネ、オレたちは学生通りに行ってみよう。」
「う、うん、わ、わかったわ」
今日のフィーネなんだか調子悪いのかな?
服装は、白の半袖チュニックに白のキュロット、その上に新しく見るベージュのロングカーディガンのような物を羽織っていた。どうやらエルフ族の服のようらしい。
どうした? その清潔感ある子どもを演出しながらも、ロングカーディガンで大人への憧れを抱いたキレイめなコーデは?
そんなオシャレをしてきたのに、モジモジしているなんて、らしくないなあ。憧れの王都で舞い上がっているのかと思ったよ。
オレは顔だけは美少女の今日は何故かポンコツフィーネが、万が一にも誘拐とか巻き込まれないように不意の手を握りしめて学生通りに向かった。
「えっ! フ、ファァ……て、手を……そんな……デデデ、デート……み、みた……もしかして……なの? ぅれし恥ずかしいよぉ………………」
ポンコツフィーネさんはブツブツ念仏を唱えているようだが、オレは学生通りを見ながら前世とこの世界を比べてなにが足りないかを考えていた。
身の危険をともなうお金稼ぎをしない為にも!
集中していたオレには、フィーネの言葉が全く耳に入ってこなかった。
へぇー空き物件もあるのか? 賃貸物件で銀貨七枚、キッチン兼カウンター付きの二階建て……悩むけど今は無理だな。何かの商売をして軌道に乗ったら借りてみるのもアリだな。
後は、服、雑貨、本屋、カフェ等の学生をターゲットにしたお店は沢山あるからな……とりあえずフィーネにも意見を聞いてみるか?
オレはこの学生通りで何か一攫千金を狙えないか、真顔でフィーネにアイデアを求めた。
「フィーネ、どう思う」
「ど、どう思うって、あ、アタシに言わせる気なの! まぁ……その…………ぃぃと思うよ」
何をゴニョゴニョ言っているんだいフィーネさん! 今はふざけてる場合じゃないぞ、このままだと冒険者モドキとして働くことになるぞ!
オレはフィーネの両肩を掴みフィーネの目を見て言った。
「フィーネ! 真面目に聞いてくれ」
「は、ひゃい!」
フィーネの大きくてシャープな目が、より大きくなり、熱があるのか顔が真っ赤になっている。
「この学生通りで何か商売できないかと考えているんだが、フィーネは何かアイデアはないか?」
オレのその言葉を聞いて、フィーネの目に力が宿った。
「このクライヴのバカ! バカァァ! 何でアタシがこんな思いをしなきゃならないのよ! アタシに迷惑をかけたんだからアンタが自分で考えなさい!」
よくわからんが、オレはフィーネロケットの
ちなみに何度も言うがオレはマゾではない!
精神年齢含めて年長者として、フィーネを心配していただけだ! 決してマゾではない!
オレ達はたいした収穫もなく、集合場所であるカフェに向かった。
「クライヴ、こっちだよ〜」
癒しのモーガンの声が聞こえた。
どうやらモーガンとリアナは先に着いたらしく、テラスの席を確保してくれていた。
それぞれ席に座るとまず腹ごしらえにメニューを見た。
オレは少し硬いパンで挟まれたハンバーガー的な物を、モーガンは謎肉のホワイトソースパスタ的な物を、フィーネは目を輝かせながら魚介のスープとミニサイズのピザ的な物を、リアナはたまごサラダと謎肉のステーキを注文した。
注文を聞きにきた店員さんがメニューを伝えに戻ろうと振り向く寸前で。
「アタシ、追加で、季節の果物のシュガーパイも」
フィーネのスイーツが追加された。
オレの金だぞ!
そして、リアナの様子が変だ。
フィーネがスイーツを注文してから、とても苦しそうに身を悶えていた。
「もしかして、リアナもスイーツ好きなの? じゃあ一緒に半分こね!」
フィーネの言葉に恥ずかしそうに頷くリアナだった。
まさかのボクっ娘リアナが隠れスイーツ好きだったとは……
ランチも終わり、それぞれオレンジやアップルのジュースを飲みながら午前中の成果の確認を行った。
モーガンがオレ達に聞いてきた。
「クライヴ達は学生通りで何か収穫あった?」
「殆どが学生に必要な店は揃っているし、通り沿いにしては割と安い賃貸物件があったくらいかな」
「そうか、その物件を活かすのはいまのボク達じゃ難しそうだね」
「ボクの平民通りも特には無いかなあ。むしろ職探しに困っていた人がいるから、ボクらのような子どもなんて相手にされないかな」
モーガンも収穫無しらしい……
「「リアナは?」」
オレとモーガンの声がハモった。
「ぼくの大通りは、宿屋に客が来た時に単発の掃除の仕事があったけど、各部屋の掃除とベッドメイキングで支払いは銅貨八枚だったよ。それと冒険者関連のお店のでは、薬屋が収集依頼を冒険者協会に、依頼しているらしく、ぼくらでも引き受けられる依頼もあるらしいよ」
ですよね……恐れていましたが……子どもにがっぽがっぽ稼げる仕事なんざないですよね……
「となると、午後から冒険者協会に行き説明を受ける事にしようか? 明日からだと学院も始まるから時間もないと思うからね」
モーガンが話をしてまとめて、みんな賛成多数だ。オレも日本人の美徳でもある協調性が前世で嫌と言うほど身に付いているので、満場一致で午後から冒険者協会に行く事となった…………
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