第2話 望月翼

常識では、あり得ないことがおきている、どう考えれば良いのか正直分からない。


俺と渚だけが見えている、化け物は本当に他の誰にも見えていないのか?


見えていれば振り返ったり、あの場所を凝視したり、誰かに尋ねて確認するはずだ、そんな目立った行動をすれば、直ぐに噂になる。


しかし、誰もが日常の中にいる。外れた行動をしている奴はいない。


不思議なことは他にもある、みんなが昨日の事件を忘れていることだ。渚と俺だけが悪夢の中にいるようだ。


----


こんな異常な事態の中で、起きた事を冷静に観察して判断することは、何の意味もないのだろう。


放課後になると、再び渚と合流した。


「いくら考えても、きっと意味はないよ、俺たちにできるのは、無視するか話かけてみるか」俺は努めて優しい声色で諭すように話しかけた。


渚は青ざめて答える。

「近寄らないほうがいいよ、あんな気味の悪い、何だか分からないモノに」


渚の正論に、無駄口を挟む。

「近寄らなくたって話しかけることはできる」


そして、また2人とも考え込み、沈黙する。

今日何回これを繰り返しているだろうか、自分にも渚にも無性に腹が立つが、それを押し殺して、話しを切り出す。


「ほっといて事態が悪くなるような後悔はしたくない、離れて危険がない場所から声をかけて様子を見てみよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る