第14話 乾杯

『些細なこと』

 と言い切った真由美さんは、その言葉どおり、あれよあれよと一緒に暮らすための準備を進めていった。


 私の家族にも会いにいった。

 父も母もすんなり受け入れた。

 驚いたけれど、後で聞いたところによると、祥子さん経由でお姉ちゃんに話がいって、両親にも根回しがされていたらしい。

 真由美さんのご両親は他界されていて、お兄さん家族には歓迎された。

 従兄弟のたくちゃんも同席していたのが引っかかるけど--昔好きだったらしいから--これで一緒に暮らせることに舞い上がった。


 住む場所は真由美さんのマンションだ。購入済みだから家賃は要らないと言われたけれど、そこは譲らず、ローン返済額の半分を払うことになった。それでも家賃より随分安い。

 家具は一通り揃っていたので、私の物は処分し、そのお金を引越し費用に当てた。

 ただ、ベッドだけは新しく購入した。

 二人で寝られるように。




「ねぇ、それってさぁ。喧嘩したらどうするの?」

 ゆきちゃんが質問した。



 今日は、同棲のお祝い(?)で、祥子さんとゆきちゃんの家へお呼ばれだ。

 もちろん、真由美さんと一緒に。

 お酒好きな真由美さんのために、祥子さんがカクテルを作ってくれると言う。


「喧嘩?考えてなかったな」

 私が考え込んでいると

「喧嘩したら、うちに来ればいいよ」

 と、祥子さんが言う。

「うん、そうだね。ほとんど私のベッド使ってないから」

 と、ゆきちゃんの天然が炸裂。

 じっとみんなの意見を聞いていた真由美さんが不思議そうに言う。

「喧嘩した時こそ、一緒に寝た方がいいんじゃない?」


「へ?」

「ん?」

「あぁ、それもそうか」

 三人三様の反応に


「その方が早く仲直り出来るでしょ?そもそも喧嘩なんてしないけど」と真面目な顔で言い放つ。


「美樹ちゃん、愛されてるね」

 ゆきちゃんの言葉に素直に頷いた。





「では、美樹にはリクエストのソルティドッグを」


「真由美さんは、お任せだったのでキールロワイヤルを」


「ゆきには、XYZね」


「しょうちゃんは?」

「レッドアイ」


「それでは、乾杯‼︎」

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