第8話 癒し
今日のオペは外回りだ
昨日は、オペ前訪問で病棟へ行った
出石さんには会えなかったけど、カルテを見たらその患者さんの担当になっていた
正確には連名だった
少し前に、新人さんを教えることになった。と言っていたから
二人で看ているのだろう
オペ出しには来るかなぁ
そろそろ時間だ
「おつかれさまです、申し送りお願いします」
やった!やっぱり二人で来てくれた
お互い、アイコンタクトをする
「はい、お願いします」
「状態は落ち着いていますが、胃管を挿入するのに手間取ってしまって確認まで出来ていません」
「はい、こちらでやっておきます」
諸々引き継いで、帰り際
小さく「ごめんね」と言われたので
「いえ、大変ですね」と返す
「今夜、癒してくれる?」と囁かれ
すぐに行ってしまった
マスクの下でニヤける顔を必死に戻し
振り返ったら
祥子センセイと目が合った
見られてないよね?
平静を装って通り過ぎようとしたら
「仲良いねぇ」と冷やかされた
「聞かれてた?」
「さぁ?はっきりは分からないけど、出石さんのことは気づいてるっぽい」
夜、出石さんの部屋で
オペ室での事を話していた
「そうだね、気付かれてる…かもね」
「そういえば、今日の患者さんの胃管、とぐろ巻いてたんで入れ直しましたよ」
「ごめん、やっぱりそうだったか」
「いえ、よくあることですから。新人さんが挿れたんですよね?」
「うん。経験させないと成長しないからねぇ」
患者さんには申し訳ないないけど…と優しいことを言う
「新人さん、可愛いですか?」
「可愛い?そんなふうには考えたことないけど?」
不思議そうにしながら、さりげなく出石さんの手が頬に触れる
「出石さんに優しく指導して欲しいな〜」
「私の指導は優しくないよ?」
「出石さんなら厳しくされてもいいかも」
「へぇ、そういうのが好み?」
なんだか話の方向性が変わってきた気がする
「たまになら。痛いのは嫌ですけど」
何を言っているんだ…私は…
「じゃぁ、今夜は…そういう感じで?」
あの、お花見の夜に私たちは結ばれた
気負うことなく自然な流れだった
やっぱり運命の人だと思った
「今日は私が癒すって言ってたじゃないですかぁ」
「あ、そうだったね。ところで・・・」
少し言い淀んでいる
「なんですか?」
「はっきり言ってくれないの?センセイに」
「え?あっ!言う、言います。ちゃんと」
「なんなら、私が言ってもいいよ」
「え、なんて言うんですか?」
「美樹ちゃんは私の彼女だから、手を出さないで。って」
微笑みながら、冗談だよ。と言う
「出石さん…」
「真由美だよ…」
「真由美さん、愛してます」
「私も」
そして今日も、癒される夜。
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