第7話 奇跡

「なんで…」

お互いの唇が離れた瞬間、溜息に似た言葉が出た

「え?」

ずっと気になっていた

「なんでそんなに、キスが上手いんですか?」

「へ?上手い…かな?」

「上手すぎですよ?」

「年の功、、かな?」

そう言って、また口を塞がれる

そうして、また私の思考は停止する



いつものように抱きしめられながら眠る

キス以上のことはないけれど

鼓動を聞きながら眠る、この安心感はかけがえがない


それでも、さっきの思考が頭をよぎる

いったい彼女は今までに、どれだけの人とキスを交わしたのだろうか

私の知らない、彼女の過去に嫉妬する


「そんな顔しないでよ…」

「そんな酷い顔してました?」

「苦しそう…私の過去が気になるの?」

彼女の暖かい手が頬に触れる


「ごめんなさい」

「謝らないでよ…聞きたいなら、、それで安心するなら話すよ?」

でも幻滅しないでね。と言う


美樹ちゃんが思ってるほど、多くの恋はしてないよ

想いが届かなかったり、付き合っても上手くいかなかったり

元々、成就出来ない方が圧倒的に多い、いびつな恋だから

一時期、遊んでた時期もあったけど

すぐに虚しさに気付いてね

そういうのはやめた

ほんとに好きな人と巡り合えることは奇跡なんだと思う


もしも、私のキスで美樹ちゃんが感じてくれてるんだとしたら

それは、私が美樹ちゃんを強く求めているからだと思う


「求めてる?」

「美樹ちゃんが欲しいの。幻滅した?」

「しませんよ。私も真由美さんが欲しいです」

「嬉しい」

「奇跡ですから…」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る