第6話 告白のその後:お花見

美樹ちゃん、お花見行かない?


そんな誘いを断る理由などない

誘ってきたのは、私の彼女なのだから


行きたいでーす♡

と、返事を打てば

すぐに既読になって

喜びのスタンプが送られてくる


幸せだ


幸せオーラ発令中なのかも

久しぶりに会ったあの人に

「幸せそうだね」と言わせる程度には


テレビでも、どこの桜が満開だとか

人出がどうとか言っている

病院内にある桜の木も見頃だ


「最初に言っておくけど、今日はお花見だけど桜じゃないからね」

期待させちゃってると悪いから。と

会ってすぐに出石さんに言われた


「え~逆に楽しみです」

桜じゃないお花見!わくわくする


「じゃ、行こうか。乗って」

出石さんの愛車で出発

天気も良いから渋滞が予想されるから

少しだけ高速道路を使って、降りたら山道をクネクネ

車窓からは長閑な風景が見える

ハンドルを握る出石さんに、こっそり見惚れる



「着いたよ」

そこは小学校だった

閉校になった小学校が駐車場として開放されていた


「ちょっと歩くね」

「はい」


小川が流れている

「田舎だなぁ」

「静かですねぇ」


誰もいないから、手を繋ぐ

未だにドキドキする



少し坂を登って山道を行く

しばらく歩くと

黄色い花がポツポツ咲いていた

さらに進むと

その花が一面に、いや、山全体に咲いていて

遠目に見ると、山が黄金色に見える


「なにこれ、凄い」


「圧巻!でしょ?」


「うん。眩しいほどに」


少し下に降りる場所があったので

行ってみたら、花を見上げる形になる


「ミツマタのトンネルだね」

「ミツマタって言うの?」

「そうだよ」

「アップで見ても可愛いね」

「そうだね」


ゆっくりと散策する

何人かとはすれ違ったけれど

やっぱり静かだ


こんなお花見もいい

愛しい人を見つめる

幸せを噛みしめる


帰りも助手席だ

「疲れたでしょ?寝ててもいいよ」

と言ってくれるけど

寝ちゃったら勿体ないよ


出石さんの部屋へ戻り

軽めの食事とお酒が出てきた

「今日、泊まってもいいんですか?」

「最初から返す気ないけど…いい?」

「はい」



「何してるの?」

お風呂上がりの出石さんが聞く

「ミツマタのこと、ちょっと調べてた」

へぇ、どれどれ。と

隣に座る

ふわっと石鹸の香りがする


「花言葉は、強靭?タフなんだねぇ」

美樹ちゃんみたい。と笑う


「その他にもありますよ?花言葉」

マウスを操作し下へスクロール

「永遠の愛?」

「はい」

「照れるね」


「出石さん…」

「名前で呼んでほしいな」

「真由美さん…」

もう何度目かの口づけを交わす


「真由美さん、ヤバいです」

「ん?」

「キスだけで、蕩けそうです」

「ふふ、可愛い」

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