第5話 告白の行方

デートの候補はいくつかあったけど

私たちは、遊園地に来た


美術館とか水族館とか

もっと大人のデートっぽいのもあったのに

出石さんの希望は遊園地だった


「ジェットコースター大好きなの」と言ってた通り

ずっと笑いっぱなし

全力で楽しんでる?

まるで今日が最後みたいに…



「この歳になると、なかなか乗れないんだよね」

1人だと特に..と眉を寄せ

だから嬉しい。と言って笑う



歳のことは気にしないで欲しい

そんな思いを込めて

「子供みたいですねぇ」と、言ったら

「ホントだね」と目を伏せた


失言だったかも

と気付いたのは少し後で

「可愛いですよ」と

小声で本音を付け足した



ジェットコースターもフリーフォールも平気で

観覧車に乗った時も喜んでいた


「出石さんも、高いところ全然平気なんですねぇ」

「うん、大丈夫。っていうか好き!高いところからの景色とかね。苦手な人もいるよね?高所恐怖症?」

「ですよね。祥子さ..センセイも高いところ苦手みたいです」

「言い直さなくても良いのに」

「昔から知ってるので、つい」

「そうなんだ・・・もしかして好きだった?」

「え」

「ごめん、答えなくてもいいよ」

そう言って窓の外を見ていた

そろそろ観覧車は1番上だ


「初恋でした。お姉ちゃんの同級生だったんです」

「そっか」

「中学の頃の話ですよ、まるっきり子供でしたね。完全な片想いだったし。そういえば“中坊の恋愛なんてママごとみたいなものだ”って何かの漫画に描いてあったなぁ」

「ふふ、可愛い」

「え?」

「中学の頃の河合さん、可愛かっただろうなぁ。今も可愛いけど」

「もう、また、そういうことを言って...」

「ふふふ」




乗り物はだいたい制覇して

敷地内にあるアウトレットモールをぶらぶらして

食事をして


楽しい時間はあっという間に過ぎていく


「そろそろ帰らなきゃね」

「そうですね」


「今日はありがとね。年甲斐もなく、はしゃいじゃった。それくらい楽しかったよ!」

笑顔で、そう言ってくれる


「私も...楽しかったです」

笑顔で返したつもりだったのに


「どうしたの?泣きそうじゃん」

「・・・少し話がしたいです。出来れば2人になれるところで」

「わかった。うちでいい?」

「はい」



出石さんの部屋へ行き

温かいお茶を入れてもらった

やっぱり落ち着くな、ここは。


「そういえば、ここで告白の予告しましたよね?」

「そうだったね」


「ずっと迷ってました。私なんかが出石さんに告白してもいいのかって」

「私は不安だったよ。ちゃんと告白してくれるかどうか。だって私、もうすぐ40だよ?」


「そんなの、関係ないです。好きな気持ちは変わらない…変わらないけど…」

「無理しなくてもいいよ。キャンセルしても構わないから」

と涙を拭ってくれた。


どうして出石さんの前では、こんなに涙が出てくるんだろ

甘えてるのかな

そうか、甘やかしてくれてるのか


意を決して

私は服を脱ぎ始めた


「河合さん?」

「出石さん、私は本気です。でも、私の全てをちゃんと見て返事をください」


「触ってもいい?痛くない?」

今は放射線の影響で赤くなっているけれど痛みはない

「大丈夫です」


出石さんは、傷口にそっと触れ

そこにキスをした


「え?」


「キャンセルされたら、私から告白するつもりだったよ。美樹ちゃんの全てを愛してる」


「い....ぃ..」

「よしよし」

出石さんは号泣する私を抱きしめてくれた



「泣いてばかりでごめんなさい」

「いいよ、美樹ちゃんが泣くのは、私の前でだけ。だよね?」



泣き止むまで、抱きしめたまま待っていてくれた出石さんに

ずっと知りたかったことを聞いた

「出石さん、名前教えてください」

「え、言ってなかったっけ?真由美だよ」


「真由美さん、私と付き合ってください」


「はい」

予告通りのキスとともに。




ー了ー

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