第3話 入学初日
「翔琉ー、何組だった?」
「3組。壮太は?」
「俺8組だ」
「流石に一緒にはなれんかったか(笑)」
「だなぁ。今日帰り予定ある?」
「いやねぇな」
「じゃあ帰り一緒に帰るべ。先に終わった方が玄関で待ってようよ」
「おっけー。じゃっ、また帰りなー」
高校の入学した初日、入学式を終え、廊下でたまたまあった俺と壮太はこんな話をした。
今日はまだ簡単な説明のみで数時間で学校は終わるので、流石に友達はできないか。と思いながら、その説明を聞いていた。説明が終わり帰る準備をしていると、一人の男の子が寄ってきた。
「君!あの時の!会って直接お礼がしたかったんだよ!同じクラスなんてなんかの巡り合わせだね!」
最初、わけがわからず戸惑ったがすぐに思い出した。この子は俺が受験の時の席が隣だった子であると。すごい緊張した様子で席に座っており、試験直前に消しゴムないことに気づき、さらに焦っていたところに俺がスペアの消しゴムを貸してあげたのだ。貸す際に一緒に合格しましょうと俺が一言かけて消しゴムを渡すと、平常心を取り戻したあの子だ。
「あー!あの時の!お礼なんてそんな。
当然のことをしただけですので。実は話せる人とかいないし、知ってる人いて俺も俺も安心しました笑。よろしくお願いします。」
とまさかの出会いに俺も少し胸を撫で下ろした。少しでも知ってる人がいたのに一抹の安堵を覚えた。その子はその後、久野雷太という名前であることがわかり、雷太とは連絡先を交換し、また明日といい別れた。そして、俺の方が壮太より早かったので玄関で壮太を待つことにした。
少しして壮太が来たので、チャリ置き場まで行き、駅に向かっていると、
「翔琉は部活とかはいんの?」
と聞いてきたので、俺は
「うーん、勉強もしたいし、部活入るとあいつらとも会えなくなるだろ」
と返すと、
「今度会ってあいつらにも聞いてみっか」
と壮太がいうので、俺も頷いた。すると、壮太がまた話題を変えて、
「お前友達とかできた?」
と尋ねたので、俺も話そうと思ってたとばかりに、
「言おうと思ってたんだけど、たまたま受験で消しゴム貸した子が同じクラスでさ、その子とは連絡先交換したな。後で紹介するよ」
と言って、壮太はおう。と言っているかのようにすこしはにかんで、その後
「お前はえーな(笑)。俺も話した子はいるけどそこまで距離縮めてねーぞ(笑)」
というので、俺もクスッと笑って、
「俺だって想像してなかったわ(笑)」
と言って、2人で笑った。
そんなこんなで駅に着いたので、もうすぐ出発の電車に駆け足で乗り込み、地元に30分かけて帰る。その中でも、壮太はまた話題を持ちかけ、
「そういえばさ、うちの学校って毎年一学年に一人ずつマドンナ的な存在がいるらしくてさ、今年も例外じゃなねぇんだと。まぁ俺は今日は見てねぇけど、お前見た?」
「いや、見てない」
「その今日話したやつが見たらしいんだけどさ、やべーんだってさ、一目惚れ不可避らしいぞ」
「そんな特殊能力あったらこえーよ」
「桜並小春(さなみこはる)って言うんだとよ」
「名前も可愛いとか反則だなぁ」
俺たちはそんな会話を電車の中でしていた。
「ていうか、なんつーかさ、そういう女の人って大体自覚あるからお高く止まってる感じあって近寄り難そうじゃん」
「それがさ、すっげー愛想もいいんだと」
「うわ、完璧超人だなそりゃ(笑)。
せめて、ケーキの周りのプラスチックについたクリームは食べるくらいの欠点くらいあって欲しいな」
「ははっ、なんだそりゃ」
そんな話を続けてると、地元の駅に着いたので俺たちは駐輪場に行きチャリを取り、その後、2人で乗りながらその話の続きをした。
俺たちの地元は田舎だからあたり一面駅から離れると田んぼが広がる。そこから吹く春の夕方のそよ風はいつ当たっても気持ちが良かった。そして、お互いの家が近くなって別れる時に、壮太が
「じゃあ、お前と明日その人見に行くから教室迎え行くわ」
「お、おい。俺は行くなんて一言も」
「じゃっ、明日も今日と同じ時間に朝、駅いろよー。それじゃあなー」
「おい、話聞けって。あ、ああ。何かあった連絡はする。じゃあなー…」
行くなんて一言も言ってないけど、流石にあそこまでいい話ばっか聞かされると気にはなる。まぁ、見るだけならと、俺は自分を説得してそよ風を浴びながら家へ1人で帰った。
次の日の朝、俺と壮太は約束通りの時間で駅に向かい電車に乗った。電車の中でする話は予想通りであった。もちろん、話を切り出すのは壮太で、
「今日の昼、見に行くぞ。終わってすぐ、確か例の子は1組だ。俺がお前のとこ行くから、お前は教室で待ってろよ?」
「分かった、分かった。待ってるよ」
俺が納得したのを見て、えらく上機嫌な壮太はその後も話すのかと思いきや、
「じゃっ、眠いから寝るわ。駅着いたら起こして。頼む(笑)」
「おい、おれおこすなん…」
「スゥー…スゥー…」
「いや寝るの早!いや、眠くないからいいけどさ…」
その後俺は、イヤホンをつけ音楽を聴いて高校の最寄り駅までを過ごした。
駅に着いたアナウンスがなると、俺は寝てる壮太を起こし、駐輪場に向かいチャリに乗る。寝起きでチャリに乗って大丈夫なのか不安だったが、壮太は起きてすぐ目が冴えたらしい。その後は授業だのの話をして、学校に向かった。その後、俺たちはそれぞれ昼まで授業に励み、いよいよ昼前ラストの四限を終えた。
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