第93話 「白天騎士団!加勢します!」

 村を襲ってるオーク達の数は…五百くらいか?

だけど村を守ってる騎士達は百くらい。

数の差が圧倒的だ。

このままじゃ押し負ける。


 いや、既に村に侵入を許してる。

村人も応戦して、何とか犠牲を出さずにいる感じか。


 このままじゃ時間の問題だな。

だけど私達が来たからには!


「白天騎士団!加勢します!」


「お、おお!援軍か!」


「で、でも隊長!たった十騎の騎兵が来たって、これじゃ!」


 安心したまえよ、新人兵士っぽい人!

この程度の数なら私一人で瞬殺出来るから!


「ティータ!私の馬は任せる!」


「あっ、ちょっと!もう!」


 私は戦闘時は馬に乗らない。

その方が強いから。その方が速いから。


「な、何だ、あの女騎士!」


「はえぇ…てか、細剣でオークを両断してっぞ!」


「待てよ…白天騎士団で、細剣を使う凄腕の剣士って、まさか…」


「まさか!剣帝!?」


「おお!剣帝が来てくれたのか!」


「噂に違わぬ超美人!いや、噂以上だ!」


「一人で戦況を一変させちまったぞ!すげぇ!」


 ハハハハハ!もっと褒めたまえ!

私は褒められて伸びる子だから!


「あっ!アイツは!?」


「オーク・グラップラー!オーク・シャーマンまでいやがる!」


「剣帝様!気を付け…って!ええ!?」


「普通に瞬殺したぁ!」


 ハッハッハッ!

私にはオークの上位種だろうが関係無い!

全て瞬殺してやる!


「アイシス!此処は私達に任せて!」


「貴女は後方に控えてる部隊をお願い!」


 後方に控えてる部隊?

ああ、アレか。何か一際デカいオークがゴブリンとオークの混成部隊に守られてる。

察するに指揮官か。


 豚のクセに生意気な。

私だって部隊長とかした事ないのに!


「よっし!此処は一つ、覚えたての魔法で!」


 ジュンとの訓練で覚えた中位魔法。

地面から岩のトゲを出す魔法を広範囲に!


「アースグレイヴ!」


「「「ギュアア!!」」」


 オークとゴブリンの串刺しが完成…はいいけど、あまり視界に入れたくないな。

よし…


「ファイアボム!」


 火の中位魔法ファイアボムでオーク達の死体は灰になった。最初からこっち使えば良かったかな。


 ティータ達も…終わったか。

取り合えず、危機は去ったかな。


「ん?何?」


「「「すっ…」」」


「す?」


「「「すっげえええええええ!」」」


「おお?」


 あっという間に兵士や村人達に囲まれてしまった。

皆、口々に私を褒めたり礼を言いながら握手を求めてきたりする。

握手くらいはいいけど、ハグとかしないぞ?


「お前達!いい加減にしないか!」


「此処は危険です。またいつ襲撃があるともわからない。急ぎ避難を」


 村を護っていた騎士達の隊長と思しき人と、ティータ達が急かしてようやく避難を開始した。


「御助力、感謝いたします。白天騎士団の方々がグラウバーン公爵領に滞在中だった事、正に天祐ですな」


「いえ、貴殿らの奮戦が無ければ、私達は間に合わず村人達は救えなかった。全ての人の尽力があってこその結果でしょう」


「…胸に沁みる思いです。御言葉、感謝いたします」


 こういう時のティータって…なんか、こう…成熟した大人だなって思う。

私より大分年上っぽい…酔うとそうでもないんだけど。


「それじゃ出発するわよ。フラウの小隊は先行して安全の確保をしてくれる。私達は殿よ。村人達の最後尾に付いて行くわ」


「りょーかい」


 村人達の避難準備は元々始めていただけあって直ぐに完了。

急ぎドノーへ移動を開始した。

流石に、直ぐに同じだけの規模のオークどもが来るとは思えないけど、用心はしないとな。


「それにしても…相当デカい規模の群れになっちゃってるみたいだね」


「もしかしたら周辺にいたオークやゴブリン達が集まって来てるのかもしれないわね」


「ん?どゆこと?」


「さっきアイシスが倒したオークの指揮官…アレはオーク・コマンダーよ。大規模に育った群れから偶に生まれるオークの上位種…群れのボスとして君臨していてもおかしくない存在。それが前線に居たという事は…」


「少なくとも群れのボスは更に上位の存在だ、と」


「目撃されたって言うオーク・キングがそうなんじゃないの?」


「かもしれないけど、それ以上かもしれないわ」


「それ以上って…オーク・キングより上位の存在なんて居たっけ」


「オーク・キングロード…オーク・キングの中でも更に強い力を持った存在が成り得るオークの中の最上位種。殆ど伝説上の存在だけど、過去にその存在は確認されてる。何でも支配力に特化し、オークを呼び寄せる力を持ってるとか」


「だから…この辺りのオーク達が全て集まって来てる、と?」


「どこまでの範囲のオークを呼び寄せる事が可能なのかは、わからないけれど」


 つまり…オーク・キングロードが光で、その他のオークが光に集まる虫みたいなもんか。

あれ?それって…この辺りのオークを根こそぎ始末するチャンスなんじゃ?


「じゃ、一ヵ所に集まった時を見計らってドカーン!とやれば一網打尽じゃん?」


「そんな簡単に行かないわよ…森ごと吹き飛ばすわけにもいかないのだから」


 そっかなー…森の何処に巣くってるのか知らないけど、そこはもうオークによって切り開かれてるんだろうし。魔法で纏めてドカンとやっても被害は少なさそうだけど。


「ア、アイシスがまともに頭を使ってる…」


「今日は雪だね。初夏なのに」


「大災害の前触れかしらね」


「失敬だなー君達!」


 このセリフを言うのも何回目だ…全く。

ん?何だろ、なーんか来たね。


「レティ」


「うん。わかってる…後方から何か来てるね」


「何処だ?私には見えない…あ。いや、見えた」


「もしかして、オーク達の群れ?本隊かしら?」


 そう、なのか?

でも、確かに物凄い数だ…ゴブリンも混ざってる。


 無人となった村に入って来てる。

どうやらあの村に居座る気のようだ。


「さっきもいたオーク・グラップラーにオーク・シャーマンも多数…ハイオークはもっと居るね」


「オーク・コマンダーもチラホラ…ミノタウロスみたいにデッカいのも居るよ?」


「アレは…オーク・デュエリストかしら。戦闘能力だけならオーク種の中で最強。A級冒険者が二人掛かりで一体倒せるかってLVの強さよ」


「げ…ヤバそう」


「アレらが追って来たら厄介ね。急ぎましょう」


 と、ティータは警戒しているけど。

どうやら追って来るつもりはないようだ。

あの村を拠点にして巣を広げるつもりらしい。


 ま、追って来たら私が全殺したけど。

というか、今やってしまうか?


「なんか良からぬ事を考えてるみたいだけど…やめなさい」


「アレが全部とは限らないんだからさー」


「アイシスが居ない間に、アレの半分の規模の部隊でも…襲われたら一溜りも無いよ?」


「む…仕方ないな」


 それは流石にダメだ。

それにティータの言うオーク・キングロードっぽい奴は見えないし。

他にも部隊が居ると考えるべきなのは間違いなさそう。


仕方ないから今回は見逃して…ん!?


「何か飛んで来る!ダイナ!」


「お、おう!ギガント!」


 ダイナが咄嗟に前に出て「四身の盾」で飛んで来た何かを防ぐ。

盾にぶつかった砕けたそれは…骨?


「これは…人の頭蓋骨、だよね」


「喰った人間の骨を投げて来たのか。もう1km以上は離れてるのに」


「追って来る気配は無いわね…挑発のつもりかしら」


 投げたのは…あの一番デカいオーク・デュエリストとかいう奴だな。

なんか他のオークと一緒に笑ってるし。

たかがオークがほんのちょっとでも私をビビらせ私を笑うとは…許さん!


「決めた!あの豚は私が殺る!」


「それはいいけど、今は撤退するわよ!」


 覚えてろよ…豚共め!

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