第60話 「さっき何て言った?」
「で!どーなの!ジュンはアレから暴走してないの!?皇女殿下を傷モノにしてない!?」
「そんな大声で…」
「今、この城には皇女殿下のみならず、他家のお嬢様が大勢いらっしゃいます。その方々に聞かれでもしたら拙い事になりますよ」
「そうでなくても色々と秘密にしなきゃいけないんだから。大きな声を出さないでよ」
ここはジュンの部屋。
集まってるのは私とジュン。ノルンにティータの四人。
また隣の部屋で聞き耳立ててる人は…居なさそうだな。
気配は感じない。
「だから!ジュン!早く答えて!」
「…はぁ。暴走はしてませんよ、今の所は」
「そ、そっか…良かった…」
という事はジュンはまだ清い身体のまま…いや、身体は私がもう穢しちゃったのだけども。
「ジュンの真の童貞はまだ奪われてないって事だね!よかったよかった!」
「真の童貞…もしかしてそれを聞く為に予定より早く来たんですか?」
「…はい。アイシスがどーしても団長を急かして」
ふふふ…どういうわけか二週間もの間暴走しなかったのは私にとっては幸運!
だけど、多分ギリギリだろう。と、なれば!
「それじゃジュン!暴走する前に私とシよっか!」
「……はい?」
「な、何言ってるのよ、アイシス!」
「だってこのままだとジュンは暴走するんだし?原因を作った私が身体を差し出すのが当然だよね!」
「そ、それは…」
つまりこれは仕方のない事!合法!合理!
更に将来結婚する者同士!なーんにも問題は無い!
「その必要はありません。ジュン様の御相手は、このノルンが務めてますから」
「………は!?」
「つまりジュン様が暴走する心配はありません。あなたの出る幕は無いという事です」
「えっと…そ、それって…ジュンさん?」
「……そういう事です」
「ノルンとジュン様はもう心だけでなく身体でも繋がっています。ウフフフ」
つまり…ジュンとノルンは?
ジュンの真の童貞は…
「ジュンの浮気者!」
「それをあなたが言いますか!全てあなたが蒔いた種でしょうに!」
「そ、それにノルンはボクの婚約者ですし。アイシスさんはまだ婚約者じゃありませんから。浮気にはならないかと」
「ま、まぁそうよね…全てアイシスが悪いのは間違いないわ。それにジュンさんが暴走したら拙い事になりかねないのだし。ノルンさんが身体を張ってくれた事に、貴女は感謝しないといけないのよ?」
「う、うぐっ…ぐふぅぅぅぅ…」
「何も泣く事ないじゃない…」
だって…だってぇぇぇぇ!ジュンの童貞が!私が貰う筈だった童貞がぁ!
「う、うぅぅぅ~!」
「はいはい、泣かない泣かない。それよりもジュンさん、一応確認しておきたい事が」
「なんです?」
「ジュンさんがアイシスと入れ替わってる間、称号の効果も共有していたのでしょう?なら【夜の帝王】と【性豪】の効果も適用されていた筈。ならアイシスの身体で、だ、男性を抱いて無ければ暴走していた筈ですが」
「……はい?えっと…はいぃ?」
「ま、まさか、ジュン様…男に抱かれたのですか!?」
「バカ言わないで!そんな事あるわけないでしょーが!」
「そうですよね。それは一緒に生活していた私もよくわかっています。ですので、私とアイシスが立てた仮説ですが、二人は入れ替わる事で共有していたのはステータスやアビリティ、称号だけでなく、他にも共有していた物があったのではないか、という事です」
「な、なるほど…その中にボクが暴走しなかった理由、具体的に言うと性欲等が含まれていたのではないか、という事ですね。二人分の性欲を発散していたからこそ、アイシスさんはああいった行動に及んだ。そして、今後の為に一応他にも何かないか考えておこう、と」
「流石ジュンさんです。理解が早いですね。ほら、アイシス、いつまでも泣いてないで、話に加わりなさい」
「………」
「ダメですね、眼が死んでます。ウフフ、仕方ないですね~」
スパアアアアアアアン!
「「あ」」
「いったああああああああい!」
な、なに!?ビンタ!?ビンタされたの!?
「な、何すんだ、ごらあああ!」
「下品ですよ。仮にも子爵令嬢ならもう少し言葉を選らんでください」
「貴女が放心してるから、正気に戻す為よ。…それだけにしては、手段がいきなりビンタだし、スナップの効いた本気ビンタだったように思うけど」
「そーだ!本気ビンタだったろ、今の!」
「まさか。オホホホ」
「ノルン…」
くっ…ノルンめ!やっぱりいつか絶対に泣かす!
「はぁ…それで、ジュンさんは何か思い至る事はありませんか?」
「…今の所、特には。LVやアビリティの成長がかなり早いなとは思ってましたけど、それは経験値も共有してるからと解答が出てますし。ですが…仮に性欲も共有されていて、性欲の発散も共有されていたのなら、ストレスや疲労なんかも共有されてたんじゃないかなと」
「私達も同じ考えです。アイシスは?今、新しく何か思いついたりしてない?」
「ううん、何にも」
「…ちゃんと考えてる?」
「考えてるよ。でもどーせ、私の知力は99でカンストだし?まともな意見なんて出せませよーだ」
「拗ねないでよ…」
ケッ。あ~あ…何か一気にテンションが沈みこんじゃったな。
まさかノルンにジュンの童貞を奪われるとは…まだ未成年のくせにっ。
「何かとても高い所に自分の行いを棚上げにしてる気配を感じます」
「何その具体的な気配。ノルンて何か新しい能力でも獲得したの?」
「うふふ、乙女の勘です」
ノルンとジュンがイチャイチャしてる…くっ、私の眼の前でイチャつく事ないだろっ。
くっそう…早く私も婚約者に……あれ?
「ねぇ、ジュン」
「なんですか?」
「さっき何て言った?」
「はい?」
「アイシスはまだ婚約者じゃないって言った?」
「あ、はい」
「それってつまりは…私を婚約者にしてもいいって事!?」
「あー…………………はい」
「ジュンさん!?」
「ジュン様!?本気ですか!?」
こ、これは!?もしかしてもしかする?
大どんでん返し!?スーパーウルトララッキー!?
「な、何故ですか、ジュン様!」
「いや…どうも父上の言うように、現状では婚約者が増やさないと収まりが付かないらしいし。なら、自分で納得出来る人を選びたい。その点、アイシスさんは…元々、素敵な女性だと思っていたんだし」
す、素敵な女性……デヘヘヘヘ。
「で、ですが!この人はアレですよ!あんな事しでかしたドアホウですよ!?」
「デヘヘ………おい、こら。誰がドアホウだ」
「貴女よ。…ジュンさん、本当に良いんですか?アイシスを妻に何かしたら、また何をしでかすか…そりゃ剣帝ですし、今となっては子爵令嬢です。能力的にも身分的にも、誰もが納得するでしょう。アイシスの内面を知る者以外」
ティータまで…ひどい。でもいい!許す!
「えっと…自分でも不思議なんですが、アイシスさんの所業はそれほど怒ってないんです。一度文句言っただけで、すっきりする程度で。精神が入れ替わった御蔭でお互いの事もよく解ってますしね」
「うんうん♪精神の入れ替わりって熟年の夫婦並にお互いの事理解出来るのかもね!」
「で、ですが…よりによってこれですか!?」
「これって。失礼だよ、ノルン」
「そうそう失礼だぞ!でもいい!許す!」
「ぐっ…何て腹立たしい笑顔…」
ハーハッハッハッ!今なら好きにのたまうがいい!
今なら大概の事は許してやるぞ!
「で、ですが、ジュン様。直ぐにアイシスさんとの婚約を発表するのですか?」
「いや、それはまだ。大体、アイシスさんの御両親に許しを頂いてないし」
「あ、ママは認めてくれてるよ。パパはまだだけど、ママの言う事には従うから」
「ぐっ…で、ですがアイシスさんの御両親が認めてくださったとしても、発表は暫く見送った方がよろしいでしょう」
「何でさ。私は今すぐに結婚したって構わないのに」
「あなたは黙っててください。ドアホウなんですから」
………やっぱり、怒っていいかな?
「先も言ったように。今、この城には他家のお嬢様方が大勢いらっしゃいます。その全ての方がジュン様と婚約する為に長期戦の構えで来ているのです。今すぐにアイシスさんとの婚約を発表するのは得策とは言えません。お嬢様方を刺激してしまいます」
「…そうね。白天騎士団も……団長達もどんな行動に出るか」
う……団長達か。
望むなら御嫁さん仲間に入れてあげようとは思ってたけど。
で、他家のお嬢様方ってのがどこの誰で、どれだけいるのかわからないけど…刺激しない方がいいのは確かなのかな?
ま、発表が多少伸びるくらい、いっか。
「ところでティータはいいのか?」
「いいのかって、何が?」
「ティータもジュンの御嫁さんになりたいんだろ?」
「は?」
「な、何言ってるのよ!わ、私は、別に、そんな…おかしなこと言わないで!」
「ならないのか?」
「な、ならないわよ…」
「でもフレイアル家から言われてるんじゃないの?ジュンと仲良くしとけって」
「何で知ってるのよ!誰にも言ってないのに!」
「あ、ほんとなんだ。カマかけだったんだけど」
他の団員にも何人か親からグラウバーン公爵家の御曹司と仲良くしておけって言われてるって話してたから、ティータももしかしてそうかなって思っただけなんだけど。
「くっ…本当にこういう無駄な感の良さ…どうにかならない?」
「どうにかって言われても。で、ほんとーにいいの?」
「う………ほ、保留でお願いします」
「ティータさん……」
ハハッ、ティータも素直じゃないなぁ。
ジュンの童貞を奪えなかったのは残念だけど…ジュンが婚約してくれるって言うなら、いっか!
「じゃ、婚約者になったわけだし…ジュン、シよっか!」
「だ、ダメでしょう、いきなりそれは」
ジュンも素直じゃないなぁ。
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