第13話 「素晴らしい…」
私とジュンが入れ替わった日から三ヶ月が過ぎた。
ファーブルネス帝国との戦争が始まって三ヶ月過ぎたという事でもある。
この三ヶ月…最初はジュンとして生活するのに苦労した。
何せ周りに説明出来ないし。説明したとしても理解されるかどうか。
で、何が一番苦労したかと言えば…お風呂とトイレだ。
何せ今の私はジュン…つまりは男の身体だ。
着替えは目を瞑ってても何とかなる。
でもお風呂とトイレは…どうしても見てしまう。
ジュンの……アレを。
これでも私は清らかな乙女。男の裸なんて上半身までだ。
下半身は……未知の領域。ジュンに黙って見るのは駄目な気がする。
御蔭で…目を瞑ったままお風呂に入ったりトイレに行ったりと。
無駄な技術を身に着けてしまった。
しかし私は私を褒めたい。良くぞ我慢したと!
話は変わって。
セバスチャンに頼んで戦争の情報…グラウバーン辺境伯様と白天騎士団の情報を集めてくれと頼んで、私になってるジュンが無事なのは確認出来た。
何でもかなり強力な魔法を使い、帝国軍を圧倒してるらしい。
その事から、やはり私とジュンは入れ替わっていると確信出来た。
ついでと言ってはなんだけど、辺境伯様は白天騎士団とは別の戦場で活躍してるらしい。
そしてこの入れ替わりの状態について、わかった事がいくつかある。
先ず一つ。
私とジュンは経験値を共有してるらしい。
経験値…LVを上げるのに必要な物。
実戦や模擬戦。鍛錬や勉強等でも獲得出来る。
ある朝、何となくステータスをチェックすると特に何もしてないのにLVが上がってた。
そして翌日も上がってた。
アビリティのLVもだ。
私は未だに駄メイドのメリーアンに着けられた魔封じの腕輪を着けたままだ。
にも関わらず全魔法のLVが上がっていた。
これはジュンが戦場で魔法を使ってるから、で間違い無いだろう。
二つ目。
これは賊を始末した時からわかってたことだが、今の私…ジュンになった私でも、私のアビリティや称号の恩恵を使えるという事。
あの時、ジュンの剣術LVは2だった。
だけどLV7で獲得出来るスキル「クリエイトソード」を使用出来たのは私の「アビリティリンク」の効果だろう。
だから私の身体を使ってるジュンが魔法で活躍出来る訳だ。
三つ目。
グラウハウトにある図書館や城の書庫に入って調べたりしたけど、精神が入れ替わるようなアビリティは現在まで確認されていないという事。
ジュンの隠れアビリティはまだ隠れたままだから未だ詳細は不明。
私の「アビリティリンク」は過去に所持者がいたらしく、もの凄くレアな特殊アビリティだけど精神が入れ替わるような事例は無かったみたいだ。
以上から、入れ替わりの原因はやはりジュンのアビリティの可能性が高い。それも過去に例の無い新アビリティの可能性がある。
もう一つ、別の可能性もあるけれど…ジュンの隠れアビリティが判明しない限りは何とも言えない。
で、以上の事がわかった後。
私が何をしてるかと言えば…
「はあっ!」
「ぐっ…ま、参りました」
「…ありがとうございました」
ジュンの身体を使って剣術の訓練と身体作りだ。
グラウハウトの防衛を任された騎士団を相手に訓練している。
「この数カ月で見違える程強くなられましたな」
「まさかジュン様に双剣の才能がお有りとは」
「魔法だけでなく剣まで…ガイン様も鼻が高いでしょう」
「まだまだだよ」
私が魔法を使って無いのに「全魔法」のアビリティLVが上がった。
なら、私が剣術LVを上げればジュン…ひいては私の剣術LVが上がるはず。
それに私が経験値を稼いでジュンのLVを上げる事が出来れば戦場で生き残れる可能性が高くなる筈。
戦場に行けない私が出来る支援はこれくらいしかない。
それに何より……楽しい!
いやー暫く忘れてたわ!鍛える事の楽しさ!
実質「剣術LV9」の私がジュンの身体に技を叩き込んでるようなモノだからか、ジュンの剣術LVが上がる上がる。
三ヶ月前まで「剣術LV2」だったのが、今や「剣術LV5」。
たった三ヶ月でこの上昇は異常。
私の「剣帝と成る者」の効果があるとしても異常な速さ。
私自身、細剣を愛用して来たから双剣という別の視点から剣術を鍛え直すのは凄く身になってるし。
それが正しい行動だと確認出来たのは最近だ。
ジュンの「全魔法」がLV10になった時。
称号「魔帝と成る者」が「魔帝」へ変わった。
ジュン(私)は全魔道士の頂点、魔帝へと至ったのだ。
ジュンは長いアデルフォン王国の歴史でも、間違い無く最年少で「帝」に至った者。
いや、世界の歴史でも最年少だろう。
そしてジュンの全魔法がLV10になった日。
私も自分のアビリティを確認した。
そして歓喜した。
私の剣術アビリティがLV10になっていた。
私の称号は確認出来ないけど、きっと「剣帝と成る者」は「剣帝」に変わってる筈だ。
最年少記録はジュンに持っていかれた形になるけど…私も遂に「帝」に至った!
こんなに嬉しい事は無い…!
と、思っていたのだが。
翌日にその喜びを更新する事になるとは思わなかった。
「「「ジュン様、お誕生日おめでとう御座います」」」
「あ、ありがとう?」
誕生日?
…そっか、今日はジュンの十二歳の誕生日なのか。
なのに本当のジュンは戦争…可哀想に。
「ジュン様、これは旦那様からのプレゼントです。旦那様はまた戦場から戻る事が出来ないので、私から渡すようにと、御指示を頂きました」
「あ、うん…ありがとう」
セバスチャンから渡されたのは二つの細長い箱だ。
長いのと短いのと。中身は…
「もしかして…魔剣?」
「はい。何代か前のグラウバーン家の御当主様が愛用された剣だそうで。ジュン様と同じく双剣使いだったとか。長剣が「光剣パルーテ」小剣が「闇剣ミール」でございます」
「光と闇…それに女の名前…もしかしてこの剣には聖霊が?」
「はい。旦那様のお話ではこの剣には聖霊が宿っているとのお話です」
「国宝級じゃん!」
聖霊…精霊とはまた別の、一部では神様として崇められてる…上位の存在。
神獣にも匹敵すると言われてる…私でも知ってる存在だ。
その聖霊が宿った剣を持ってる事も驚きだけど…それを十二歳の誕生日にプレゼントするとか。
とんでもないな、グラウバーン辺境伯様…
「ジュン様の近況はお手紙で旦那様にお伝えしているのですが…ジュン様が双剣使いになり、剣術の腕をメキメキ上げている事を大層お喜びになり…この剣を渡すように、と」
う、うーん…ジュンと辺境伯様のやりとりからわかってたけど…相当な親バカだなぁ…
「ジュン様。仰る通り、その剣は国宝級。グラウバーン家の家宝です。それをジュン様に託された意味。よくお考えくださりますよう、お願い申し上げます」
「セバスチャン……わかったよ」
と言っても?
私じゃなく、ジュンが考える事なんだけどね?
ま、元に戻った時にちゃんと伝えるよ。
今の私、知力の数値高いから。
記憶力抜群だし。
「ではパーティーを始めましょう。戦時下ゆえ、他家からの客人は招く事叶いませんが…」
「ううん。構わない。その方が気楽でいいしね」
そもそもグラウバーン家の使用人にしたって顔と名前が一致してるのは僅かだし…
そしてジュンの誕生日パーティーが終わった夜。
もう一つの…プレゼント。私にとって人生最大の転換点がやって来た。
さぁ寝るか、と。
いつも通りに眼を瞑ったままお風呂に入ってサッパリして部屋に戻ると。
メリーアンと二人のメイドが待っていた。
「何?どうかしたの?」
「ジュン様…これからジュン様にはお勉強をしてもらいます」
「お勉強?今から?」
「はい。とても重要な事です」
重要…だとしても何もこんな時間にする事ないじゃん。
一体何をさせるつもりだ?
「ジュン様は貴族家の当主として最も重大で重要な仕事とは、何か御存知ですか?」
「え?領内の平穏を守る…つまり政治じゃないの?」
「違います。それも大事ですが、それは有能な部下に任せてしまう事も出来ます。最も重大で重要な仕事…それは御世継ぎを作る事です」
「ふむ………ん!?」
「旦那様は戦場。そしてジュン様は一人息子。ジュン様には確実に御世継ぎを作って頂く必要があります。よって…子作りに失敗するなどあってはならない。その為のお勉強です」
「待て。待て待て待て待って!つまりお勉強って…」
「はい。私達を相手に子作りのお勉強をして頂きます」
「ア、アホかー!!!」
中身は成人した私だけども!
十二歳のジュンに子作りのお勉強とか!
アホ過ぎる!
「アホではありません。これは旦那様からの御指示でもあります」
「だからいつもと違う口調なのかな?もういいから、部屋から出ていって」
「そうはいきません。えいっ」
「ふがっ!?な、にを…」
うっ!?これは…身体が熱く…!?
「スプレー型の媚薬です。どれだけLVが高くとも、耐性のあるアビリティか装備でもしていない限り、抵抗は不可能。私達にも…えいっ」
こ、これは…これは拙い。
幾らジュンの身体でも中身は乙女な私。
女が女に襲われるなんて…嫌過ぎる!
「うふふ…さぁジュン様。我慢する必要は無いんですよ。大丈夫…ノルンには秘密にしますし、私達に全て任せて…さぁ…」
くっ…たかが、たかが媚薬程度で!
この私の鋼の精神力が屈したり…屈したりは…………………あっ。
チュンチュン…チチチチチチ……
「もう…ダメ…」
「ジュン様…すごい…」
「うふ、うふふ…三人で来て…正解でした…」
あぁ……ヤってしまった…あぁ、でも…世界がとても美しく見える。
青い空…輝く太陽…雲から溢れる陽射し…全てが美しい。
あぁ…世界って、女体って…
「素晴らしい…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます