第12話 「ナニやってんのお前!?」
「侵入した賊の始末は?」
「完了しました!今は城の周辺、及び領都内を捜査中です!」
夢から目を覚ます為に窓からフライングしようとしたらメイドにタックルされて阻止された。
その時に顔を床にぶつけたんだけど…普通に痛かった。
どうやら私がジュンになってるのは夢じゃないっぽい。
で、今はグラウバーン辺境伯様と一緒に使用人や騎士達に護られてる、というのが今の状況。
「よし。騎士団長はそのまま残敵掃討に当たれ。半分…いや、3分の1は俺と共に王都に向かう」
「はっ!」
「セバスチャン。賊の侵入を手引した奴が居るはずだ。お前の部下を使って探し出せ。それとジュンに護衛を付けるのを忘れるな」
「畏まりました」
話を聞いてると…辺境伯様は王都に向かうっぽい。
何故、今?此処を留守にしていいのか?
「辺境…じゃなくて、父上。王都に向かうのですか?」
「ああ。賊はまず間違いなくファーブルネス帝国の犬だろう。俺とお前の命を狙って来たのは開戦前に王国の戦力を削り混乱を誘う為だろう。となれば、狙われたのは俺達だけじゃない。他の領主、王家も襲われた可能性が高い」
「王家が…」
「そして恐らくは西方のサンフォード辺境伯領に既に侵攻されてるかもしれん。援軍が必要だ。だから俺は王都に行かねばならん」
僅かでも援軍を率いて王都に行き、王都から西方に行くのか…多分、白天騎士団も。なら…
「辺…父上。わた…ボ、ボクも行きます。連れて行ってください」
「駄目だ」
「父上」
「お前はまだ子供だ。そして大事なグラウバーン家の跡取り息子だ。お前を戦場に連れて行く事は出来ん」
「でも…」
多分だけど、私がジュンになってるって事はジュンは私になってる筈。そしてこの状況はアビリティのせいだとしたら。
寝て起きて状況が悪化した以上、直接会って解除するしかない。
白天騎士団が戦場に行くならジュンから此方に来るのは難しいはず。
なら、私から行かないと…
「…そんな心配そうな顔をするな。俺は大丈夫だ。セバスチャン、ジュンを頼むぞ」
「はい、お任せください。さ、ジュン様。此方へ」
「あ…ちょっ、父上!」
「俺の事は心配いらん!暫く会えなくなるが…セバスチャンの言う事を聞いて大人しくしておくんだぞ!」
どうやって辺境伯様を説得するか考えてたらなんか誤解された。辺境伯様は部下を率いて行っちゃったし。
どうするか…
「さ、ジュン様。もう賊は居ませんし、遅い時間ですから、もうお休みください。私が添い寝しますから」
「うん………うん!?」
考え事しながから執事のセバスチャンに連れられてジュンの部屋まで戻って来たら…いつの間にかセバスチャンは居なくてメイドが居た。
てか、何て?添い寝?
「要らないよ、添い寝なんて!」
「ダーメです。セバスチャン様の指示です。『ジュン様は親想いで賢い方ですから抜け出して旦那様に付いて行くかもしれません。しっかり監視していてください』との事ですので」
見抜かれてた!付いて行く理由は違うけど!
「ですので…えいっ」
「ん!?何これ??」
「魔封じの腕輪です。本来は魔法使いの罪人用の魔法道具ですが…ジュン様は転移魔法で王都にいけちゃいますからね。封じさせてもらいました。テヘッ」
このメイド…!この私にあっさり腕輪をはめるとは…デキる!
まぁ、私が使える魔法は二つだけだからあまり意味無いけど…てか、ジュンって転移魔法が使えるのか。
凄いな…宮廷魔道士でも使えるのは極少数って話だったような。
「因みにその腕輪は自分では外せません。罪人用ですからね。さ、諦めてこのメリーアンと一緒に寝ましょう。御触りもOKですし、ノルンには内緒にしときますから」
「何言ってんの」
ノルンって誰だよ…ハァ…仕方ない。
今日の所は大人しく寝よう。
逃げようにも、このメリーアンってメイド…隙がない。
かなりの達人…見た目は普通のメイドなのに。
それに…
「…周りに居るのは誰?」
「あっ、気付いちゃいました?ジュン様の護衛です。この気配はソニアとエッタですかね。まさかジュン様に気付かれるなんて…弛んでます。お仕置きが必要ですかねー」
「…やめてあげなさい」
護衛…辺境伯様が言ってた、セバスチャンの部下か。
セバスチャン自身も相当に強そうだったけど…メイドまで強いの?グラウバーン家って。
「さ、ジュン様。早く寝ましょう」
「わかったよ…」
兎に角、落ち着いて状況を整理しよう。
もう賊の心配は無いし、始末した賊の死体は片付けられてる。
メイドが居ても目を瞑ってれば…
「って、何で裸!?」
「え?メイド服を着たままの方が良かったですか?」
「何が!?」
「もう、ジュン様ったら!言葉攻めですか?嫌いじゃないですけどぉ…私は攻められるより攻める方が好きなんで!」
「意味がわからないから!」
何だ、この淫乱メイド…私が男だったら襲われてるぞ。
いや、今は男なんだけど。
「はぁ…もういいから。寝るよ。大人しくしててね」
「はーい」
で、現状把握…やっぱりステータスチェックからだな。
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ジュン・グラウバーン LV30 状態:接続 (アイシス)
性別:男
職(身分):魔道士(アデルフォン王国辺境伯嫡男) 賞罰:無
年齢:十一歳
称号:魔帝と成る者
アビリティ:全魔法LV9 剣術LV2 ???
能力値:HP588 MP3252
物理攻撃力288(0)
魔法攻撃力2032(0)
物理防御力920(10)
魔法防御力1341(10)
力288 魔力1104
体力795 器用さ802
知力852 精神力810
速さ942 魅力863
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「ぶっ!」
「きゃ!何ですか、ジュン様!」
「あっ、ご、ごめん」
「もう!私にはツバを吐かれて喜ぶ性癖はありませんから!どちからと言うと吐きかける方が好きです!」
「何言ってんの、お前」
この駄メイドは放っておこう。それよりもこのステータスだ。
状態が接続になってるのは予想してた。
私の名前がある事も。ジュンのステータスを見れる事も。
だけど色々おかしい。
先ずはLV。前に見せてもらった時はジュンのLVは20だったはず。
それがこの短期間で30…どう考えてもおかしい。
あの賊を五人始末したくらいでここ迄上がるとは思えないし。
全魔法のLVも8から9になってるし。
何より体力等のステータスだ。
明らかに異常に上ってる。移動中に見た私のステータスを少しだけど超えてるし……私のステータスは…見れないか。アビリティだけしか見れないな。
んー…やっぱりこの状況はジュンの隠れアビリティが原因?
と、考えるのが現状では妥当……ん?
「んんっ…あっ…んふぅ」
「ナニやってんのお前!?」
「あ、何だ…起きてたんですか。ジュン様ったらこんな美女が裸で目の前に居るのに寝ちゃうから。私はすっかり受け入れ準備OKだったのに。モヤモヤするから自分で自分を慰めて…あふっう」
「止めんか、この淫乱駄メイド!」
何なんだ…何なんだこのメイド!こんな変態が側に居て…ジュンは大丈夫だったの?
全く………でも…でも、何だろ?
この腹の底から湧き出るような…熱い何かは…?
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