第5話 「適切な表現だと思うけど?」
「それでどうでしょう!?」
「え、ええとぉ…」
う~ん…噂に違わぬステータス…私に匹敵する天才だな、この子。
ハッキリ言って魔法面では私に出る幕は無い。
だけど今、私に求められているのは剣の腕を伸ばす為にはどうしたらいいのかというアドバイス。
なら、なんとかなる!
「それにしてもジュンも隠れアビリティを持ってるんだね」
「も?もしかしてアイシスさんも持ってるんですか?」
隠れアビリティ。
ジュンのステータスボードのアビリティ欄にある???となっているアビリティの事。
これは特定の条件を満たす事でそのアビリティの詳細が解るようになっている。
詳細が解らないだけで無意識に使える類のアビリティも存在する。
条件の内容は本当に様々で、例えば成人した途端に判明する物や一定のLVに達したら判明する物。
酷い物では初めて人殺しをしたら、とか。初めてキスをしたら、とかがある。
開示条件の内容とアビリティは必ずしも関連した物とは限らない。
「うん。私も一つ持ってるよ。ああ、私のステータスも見せてあげる」
私のステータスはこうだ。
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アイシス・ニルヴァーナ LV38 状態:普通
性別:女
職(身分):騎士(白天騎士団所属 アデルフォン王国騎士爵令嬢) 賞罰:無
年齢:十五歳
称号:剣帝と成る者
アビリティ:剣術LV9 体術LV3 ???(開示条件未達成)
能力値:HP477 MP152
物理攻撃力242(0) 魔法攻撃力122(0)
物理防御力774(22) 魔法防御力333(15)
力242 魔力112
体力688 器用さ701
知力53 精神力422
速さ773 魅力718
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「あれ…?思ったより、攻撃力の数値が…あ、そうか」
「そ。今は剣を装備してないからね。剣を持てば物理攻撃力の数値は2000を超えるよ」
今は騎士服だから鎧を着れば防御力も上がる。
因みにステータスの事をもう少し詳しく説明すると以下の通りになる。
・力は物理攻撃力とスキルの威力に影響する。
・魔力は魔法攻撃力に影響する。
・体力は物理防御力とHPに影響する。
・器用さは武術系アビリティの習得とLVの上昇に影響する。
・知力は魔法攻撃力と魔法の習得、魔法アビリティの習得とLVの上昇に影響する。
・精神力は魔法防御とMPに影響する。
速さと魅力はそのままだ。
速さはどれだけ早く動けるか。
魅力はどれだけ魅力的な人間に見えるか。
魔獣や動物を使役するテイマーという職に就く者には重要な数値だが。
それと『剣帝と成る者』の詳細はこう。
【剣帝と成る者:剣装備時攻撃力上昇 剣術アビリティ上昇 剣術アビリティ獲得難易度低下 体力上昇 体力上昇プラス補正 器用さ上昇 器用さ上昇プラス補正 速さ上昇 速さ上昇プラス補正】
上昇プラス補正というのはLVアップした時のステータスの上昇が通常よりも大きく上がるという事。
「ま、アイシスが一種の化け物なのは確かですね」
「化け物って。もっと他に言い様はないのか?」
「あら。適切な表現だと思うけど?」
「ティータだって結構強いじゃないか!」
「貴女と比べるとねぇ…ジュンさん、参考までに私のステータスもお見せしますよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
全くもう…ティータだって槍一本で大の大人の男五人をなぎ倒したりしてるくせに。
で、ティータのステータスはこう。
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ティータ・フレイアル LV33 状態:普通
性別:女
職(身分):騎士(白天騎士団所属 アデルフォン王国騎士爵令嬢) 賞罰:無
年齢:十七歳
称号:無
アビリティ:槍術LV7 体術LV2
能力値:HP355 MP103
物理攻撃力180(0) 魔法攻撃力133(0)
物理防御力377(22) 魔法防御力311(15)
力180 魔力117
体力307 器用さ370
知力175 精神力388
速さ372 魅力699
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うん。
私が化け物ならティータも充分…化け物と言える、よね?
…多分、きっと。
「ティータって…結構賢かったんだな」
「そんな事無いわよ。貴女の知力が低すぎるだけよ。貴女の知力の数値はハッキリ言って初等学院の低学年と同程度よ?全然勉強して無かったのが伺えるわね」
「五月蠅いな!どうせ私はバカだよ!」
「アハハ…」
因みに、一般兵の成人男性のステータスはそれぞれの能力の平均値が100前後。
それを考えるとティータも化け物と言える筈…そう考えると私も化け物だいう事を否定出来ないのだけども…
「ね?ジュンさん、御分りでしょう?私はこれでも白天騎士団の中でもそこそこの実力者です。その私を遥かに凌駕するステータスの持ち主がアイシス。そしてアイシスは非常識の塊です。彼女の言う事はあまり真に受けない方がいいですよ?」
「こらぁ!誰が非常識の塊だ!」
「常識人は貴族の顎を砕いたりドラゴンを単騎で仕留めたり剣で落石を粉砕したりしないのよ」
「出来るんだからいいじゃないか!」
「先ず出来るのが普通じゃないんだってば…」
「あは、アハハ…え、ええと、それでアドバイスの方は…」
「あ、ああ。そうだった。そうだなぁ…」
「ジュンさんはやはり剣士として必要なステータスを伸ばすと良いと思います。ですので筋力トレーニングに体力トレーニングをすると良いでしょう。毎日ランニングする事も御薦めしますよ」
「ああ!おいこらティータ!私の出番を取るな!」
「ダメよ。貴女に任せたらジュンさんがどんな可哀想な事になるか。どうせ貴女の事だから無茶な事をやらせるつもりだったんでしょう?」
「そんな事は無い。先ず重りを着けてランニングと筋トレ。それから実戦訓練に魔獣狩りだな。ゴブリンじゃ物足りないだろうからハイオークの群れの殲滅がいいかな。簡単だろ?」
「普通の人なら確実に死ぬわよ…やっぱり貴女だけに任せるのは不安で仕方ないわ」
え~?一体何処に問題が…
「貴女は暇な時にジュンさんと模擬戦をするくらいに留めておきなさい。勿論手加減するのよ?」
「ちぇー…でもそれだけじゃあ…」
もっと接触する機会を増やさないと…ええと…そうだ!
「じゃあさじゃあさ!ジュンは私に魔法を教えてよ!」
「え?それは構いませんけど…アイシスさんは魔法を覚えたいんですか?」
「うん!魔法ってやっぱり何かと便利だしね!」
「貴女呪文とか覚えられるの?アビリティを獲得してLVを上げれば詠唱省略とか詠唱破棄というスキルを獲得出来るけど…魔法の習得には先ず呪文の詠唱が必須よ?」
「う…そ、そこは頑張るよ!」
いくら私がバカでも呪文を覚えるくらい出来る。多分…兎に角!
「それじゃ早速一緒に訓練しよう!」
「え?今からですか?」
「待ちなさい。明日には出撃がある筈よ?流石に今日は無いにしても早めに休まないと」
「大丈夫大丈夫!さ、先ずは一緒に御風呂に入ろうか!」
「あ、はい……って、えええ!?」
「貴女、何言ってるの!?」
「だって私ら長旅で汗かいたままだし」
「でも訓練をするんでしょう!?いえ、その前に何故ジュンさんと一緒に入る必要があるの!」
「そりゃー私は剣を教えて、ジュンは私に魔法を教える。言わば師弟関係を結ぶわけでしょう?なら裸の付き合いも必要だって!」
「必要無いわ!間違いなく!」
「えっと…一緒に御風呂はボクもどうかと思います…色々問題が…」
「大丈夫。私が隅々までキレイキレイしてあげるからね。そりゃあもうピカピカに。で、夜は一緒に寝ようね~グフ、グフフフフフ、デヘヘヘヘ」
「ええ…ティ、ティータさぁん…」
「アイシス、貴女…例のバカ貴族よりも下種な顔してるわよ…」
「失礼だなぁ」
さぁ!いざ行かん!めくるめく夢のパラダイスへ!
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