第4話 「ステータスボード見せてくれる?」

「アハハ…そ、それは凄いですね…うん…凄いですね」


「でしょ?でしょー?私は凄いんだ!」


「…ハァ」


 騎士団の話やアイシスさんの武勇伝なんかを聞いていたのだけど…冗談なのかな。

しつこく絡んで来た子爵…確か王城に勤める財務系貴族のガーデルマン子爵の子息を鞘に入ったままの剣で下顎を殴って顎を砕いた話は父上から聞いていた。

それはよほどその子息の接し方が悪かったんだろうな、と思っていたんだけど…実際父上もそう言ってたし、その子息の評判はかなり悪いらしいし。


 だけど…訓練で騎士見習い十人を相手に剣一振りしただけで全員気絶させたとか。

行軍中に遭遇したドラゴンを一突きで仕留めたとか。

道を塞いでいた落石をどかせるのに剣で斬り裂いて砂にしたとか…無理が無い?

だってアイシスさんの剣って細身の剣…レイピアと言われる突きを主体にする剣だし。

そりゃ勿論剣だから斬る事も出来るけど…剣で道を塞ぐような落石を砂にするとか可能なのかな。

ボクも魔法なら出来ると思うけど…


 アイシスさんのキラキラした眼からは嘘を言ってる気配は感じないけど、ティータさんは呆れてる。ちょっと判断が付かないなぁ。


「ええと…確かジュンさんはアイシスのファンだとか?」


「あ、はい。以前王都で行われた御前試合を見て。凄く…綺麗だと思って」


「き、綺麗!?私が?」


「はい。凄く綺麗な剣捌きだと…」


「グヘヘ……あ、剣ね…」


「確か二年前でしたか」


「はい。その時はボクもまだ王都の学院に通っていて王都に滞在してましたから」


 国中の騎士団の代表一名が王の御前で各々一試合だけ行われた御前試合。

それ以前から七天騎士団歴代最年少の騎士として有名だったアイシスさん。

その強さを是非見てみたいと父上に言って観戦させてもらった。

あの時のアイシスさんの強さは今でも眼に焼き付いてる。


「そっかぁ。あの時の試合を…ん?今は学院に通ってないの?」


「そう言えば今は夏季休暇でもありませんし、何故王都を離れて?」


「あ、ボクはもう学院を卒業しまして。去年戻って来ました」


「ええ?それって飛び級で卒業したって事?」


「それは凄いですね。高等学院には進まなかったのですか?」


「ええ。初等学院に入るのは半分義務ですが高等学院に入るのは自由意志ですから。父上も学院に行かずともグラウハウトで研究も訓練も自由に出来るから戻って来い、と言ってくれたので」


 アデルフォン王国の教育形態は六歳から十二歳まで通う初等学院。

初等学院を卒業後は専門分野を学ぶ高等学院に進むか何らかの仕事に就くのが普通。

因みに王都の王立学院には貴族の子息が通う歴史のある学院だ。


「ふーん。ジュンも噂通りに優秀なんだ」


「いえ、ボクなんてアイシスさんに比べたら。ボクは魔法と学力が認められて卒業出来ましたけど武術は精々並でしたし」


「あ、一応武術もやってるんだ。何をやってるんだ?」


「ガイン様と同じ槍でしょうか?」


「いえ、ボクが選んだのは剣です。父上から槍の指導以外にも様々な武器の指導は受けましたが、剣が一番しっくりきたので。一応「剣術 LV1」は習得出来たのですが」


「ジュンさんの歳を考えれば一般的には十分ですよ。更に学力が高く魔法の腕が宮廷魔導士並となれば非常に優秀と言えます。自信を持って良いかと」


「だな。私なん魔法関連のアビリティは一切無いからなぁ」


「ありがとうございます。でも剣の腕ももう少し磨きたいと思ってはいるんですけど、中々…」


 これでもボクは武人の家系であるグラウバーン家の嫡男。

父上は気にせず魔法の腕を上げればいいと言ってくれてるけど…せめて一般騎士並にはなりたい。


「んー…じゃあさ時間がある時に剣の稽古を付けてあげよっか?私で良ければ」


「え、ほんとですか?ありがとうございます!是非!」


「……」


「何さ、ティータ…その眼は」


 これは嬉しいなぁ。『剣帝』になるのは確実と言われるアイシスさんの指導が受けれるなんて。


「そんな安請け合いして大丈夫なの?貴女、人にモノを教えるの向いてないと思うのだけど」


「失礼な。勉強とか魔法は無理だけど剣なら自信しかないよ。えっと、そうだなぁ…あ、良かったらステータスボード見せてくれる?それだけでも何処を伸ばせばいいかアドバイス出来ると思うから」


「あ、はい。御願いします!」


 自分のステータスは「ステータス・オープン」の言葉で見れる。

ただし、それでは自分しか見れないので他人に見せるにはステータスボードという魔法道具を使う必要がある。


 ステータスボードはステータスに「賞罰」という欄があって何らかの功績や犯罪歴の有無などが解る為、国境の関所や街の入口等で犯罪者や他国の間者の侵入を防ぐのにも一役買っている。


 傍に控えていたメイドにステータスボードを用意してもらってボクのステータスを表示する。

ステータスボードは大きな四角形で板状の手鏡のような形の物で、ボードに触れるとステータスが表示される。


 ボクのステータスはこんな感じだ。



----------------------------------------------------------------------


ジュン・グラウバーン LV20 状態:普通


性別:男


職(身分):魔導士(アデルフォン王国辺境伯嫡男) 賞罰:無


年齢:十一歳


称号:魔帝と成る者


アビリティ:全魔法LV8 剣術LV1 ???(開示条件未達成)


能力値:HP227 MP2700 


    物理攻撃力80(0) 魔法攻撃力1782(0) 


    物理防御力127(20) 魔法防御力1332(20)


    力80 魔力772


    体力121 器用さ220


    知力551 精神力507


    速さ112 魅力855


----------------------------------------------------------------------  


 物理攻撃力や魔法防御力のカッコ内の数字は身に着けてる物によって変動する。

つまりは武器と防具によって補正された数値という事。

今は武器は装備してないので物理攻撃力と魔法攻撃力の補正は0。

攻撃力は素手なので力の数値がそのまま攻撃力になる。

防具は服しか着てないのでこの数値だ。


 称号やアビリティなどはその部分に触れれば詳細を読む事が出来る。

『魔帝と成る者』の詳細はこうだ。


【魔帝と成る者:魔法アビリティLV上昇補正 魔法アビリティ獲得難易度低下 知力値上昇 知力値上昇プラス補正 精神力値上昇 精神力値上昇プラス補正 魔力値上昇 魔力値上昇プラス補正 MP上昇 MP上昇値プラス補正】


 …正直言ってボクの能力は同年代の子供に比べてかなり高い。

だけど見て解る通り、それは『魔帝と成る者』の恩恵と少しの努力だ。


 学院でもよく「称号の御蔭で成長が早いだけ」とか「称号が無きゃ凡人」だとか言われたけど、

実際その通りだと思う。


 だから余計に武術の腕を磨きたい。

それなら称号の御蔭で強くなっただけの子供と言われなくて済むから。


「…なぁ、ティータ。これってさ…」


「ええ…とんでもない能力値です。確かに戦士系の能力は並と言える…とは思いますが、それでも十一歳にしては高い方ですし魔導士系の能力は既に宮廷魔導士に匹敵するどころか、それ以上です。王国最高の筆頭宮廷魔導士エメラルダ様並かも…」


「だよね。流石の私でも解るよ」


「アハハ。それは大袈裟ですよ」


 宮廷魔導士並とはよく言われてたけど流石に大陸有数の魔導士と言われるエメラルダ様と並ぶほどじゃない。


「それでどうでしょう!?」


「え、ええとぉ…」


「うう~ん…」


 『剣帝と成る者』というボクと似た称号を持つアイシスさんならきっと素晴らしいアドバイスをしてくれるに違いない!


 ワクワク ワクワク

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