第14話 メル

初戦の完勝から数日。

どうやらシエラを中心にの交渉が行われたようで、1対1の個人戦の3本勝負により決着をつけるという至ってクリーンな戦争になったようだ。


そして一番の問題は—


「なあ、ティナ。お前も獣人なんだし、向こうの王様ってどんなやつか知ってんだろ?」


「ん~、私は生まれも育ちも帝国だからあんまり詳しくないのさ。あ!でも確か歳は50過ぎで見た目は2足歩行のライオンって感じで—」


「OK,ティナ。もう十分だ。」


一番の問題は、戦利品扱いの俺は、帝国が負ければ獣王の婿になるということだ。



—数日後 作戦室にて


「えー、会場は両国国境付近にある、捨てられた闘技場ダストコロシアムで行われます。


試合形式は1対1。


どちらかが気絶、または死亡、ギブアップを宣言することで勝負が決まります。


魔法、アイテムの使用は自由


外野からの妨害など、

上記のルールへの違反行為がないよう、近隣各国及び当該の両国からも魔法探知スキルに長けたものを中心とした観客が入ります。


なお、1試合ごとにアトランダルに選ばれたフィールドスタイルを設定・構築します。」


シエラの説明にも熱がこもっているのを感じる。


「いよいよって感じがしてきたな。」


「そうだね、試合?楽しみだね。」


ヤリスはピクニックかなんかに行くくらいの感覚なのだろう。


「それでじゃ、今日は試合メンバーを選抜するために集まってもらった。」


「おおお!ついにこの時が来たのさ!腕がなるのさぁ!!」


「ごちゃごちゃと話すのはあまり好かんからのう。よって、この投票箱に1人あたり3人の名を書いてもらい、最も得票の多かった3人を選抜メンバーとする。」


そう言うと手元に3枚の切れ端が配られてた。


そして—


「それでは結果を発表します。


1位    シャルティア   6票

2位(同率)シエラ      4票

2位(同率)メル       4票

3位    ヤリス      3票

4位    ひかる      1票


以上となります。」


誰だ俺に入れやがったアホは…ってこの類のアホはノルンのやつしかいねえか。


「ふむ…。まあ順当な結果と言えような。」


「え〜何でみんな私に入れてくれないのかな〜?♡」


「「「信用の問題だな」」」


「きゃー!みんな息ぴったり〜♡」


「うがー!なんで私も0票なのさ!何で何で何でなのさー!!」


「そう言えば当初、ティナ殿にはのようなお立場で同行していただいてたんですよね…。」


そこまで言って、シエラは言葉を濁したがそれ以上言わずともみんなの考えはひとつだった。


「そんなもの、おぬしが全く使いもんにならんからじゃろが。」


シャルの右ストレートはティナにクリーンヒットした。


それにしても—


「なあ、このメル?って娘はなんなんだ?俺会ったことないよな?」


「メル…。いい子?だよ。」


「まあ私の方が可愛いけどね♡」


「まあなんというかのう、1対1戦闘においてやつほど優秀な人材はおらぬな。」


シャルがこれほど素直に褒めるなんて。そんな強い娘がまだいるのか。


「まっ、私こうなるかな〜って思って、メルちゃん連れて来ちゃいました〜。どうぞ〜♡」


まるでマジシャンが鳩を出す様に、モヤの中人影が浮かんでくる。


「みなさん、こんにちは!メルだよ!よろしくね!」


「なっ!」


どう見ても10歳前後の子供じゃねえか。


「キャハ♡ひかるちゃん驚いてる〜♡ナイスマジックだったよ、魔女ちゃん♡」


ヤリスはテーブルのクッキーをポリポリと食べながら親指を立てている。


初戦のあの日からこの2人は何かとつるんでいるみたいでちと厄介な気もする。


「メル、その力貸してもらうぞ。」


「うん!シャルティア様、メルはね、頑張れる子だよ!」


そういうと、メルはテコテコとこっち向かってきたと思ったら俺の膝の上にちょこんと座った。


「お兄ちゃん!よろしくね!」


なんだろう、この感情は。

とりあえずもし俺にいつか子供ができたとき、最初は娘がいいなと思った。

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