第7話 割り込み裁判①

「あの魔女は打首じゃ。議長よ、文句はなかろうな。」


「は、ははっ!仰せのままに」


俺が寝取られ騒動から3日後の昼すぎのことだ。

霧の魔女ヤリスは当然シャルティアの怒りを買い、牢獄に閉じ込められたようだ。


それにしても、死刑ってのはやっぱり嫌ではあるが、今回に関して俺が口出しをするのはなんというか、倫理的に良くない気がしている。


「はあ、どうしたものか…。」


「だ、だだだいじょうびなのさ!ヤリスは死なななないのさ!」


裁判所でこれから開かれるのはヤリスは有罪or有罪という感じの裁判である。

この国では法権主義を掲げており、皇帝の独断で物事を決めず、法のもとの正義を遵守する国家であるそうだ。


まあ、そんなのは形式だけだろうな。


裁判長のシャルティアへの怯えっぷりがそれを証明しちゃっている。


「そういや、ヤリスとお前って知り合いなんだよな?」


ティナはなんだよ今更と言いたげな顔を向けてきた。


「知り合いというかヤリスは私らの恩人…なのさ。」


「というと?」


「私ら獣人はうんと昔奴隷として人族に使われていたのさ。でも現皇帝の血筋の人が国を作り替えた際に奴隷制度を撤廃して、今の法権の基礎を整えたのさ。」


「ふーん、昔は大変だったのはわかるけど、それがヤリスとなんの関係があるんだ?」


「本当になんも知らないやつなのだな!…はあ。ヤリスは幾年もの時を過ごしてきた霧の魔女。不老不死なのさ。」


正直めちゃくちゃ驚いた。でも、ヤリスのあの透明感、そして一切の穢れを寄せ付けない不思議な雰囲気ならあり得る話かとも思ってしまった。


「てことはヤリスは昔っから獣人と仲良しって感じか?」


「うん、まあそーゆーことなのだ。ヤリスは奴隷解放後の私たちに簡単な薬学、栽培学、建築学を教えてくれた。ああ見えて博識なのだ。まあ、私はそんなヤリスがすごい人って知る前に仲良くなっちゃったもんだから、別に敬意を持ってーとかいうことじゃないのさ。」


「友達、なんだな。」


「まあそーゆーことなのさ。」


なるほどな。

これはヤリスを助ける口実が1つ増えたな。


まあそもそも助けないっていう選択肢はなかったけど。


「では、これより皇帝シャルティア様の名の下、開廷する」


俺たちが雑談しているうちに俺たちが座る参列席は城の従者【野次馬】でいっぱいになり、シャルティアは裁判長や俺らを見下ろせる最も高い位置のやたら豪勢な椅子に座していた。


ヤリスも遅れて入廷し、裁判が始まった。

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