第4話 謁見の間

「騎士団団長、シエラ!昨日突如現れた男、ひかる殿を連れて参りました!こちらのもの達はティム、ヤリスと申すもの!ひかる殿誘拐及び…せ、性的な暴行を加えたとして連れて参りました!」


帝都のでっかい城にも驚いたが、何だよこの部屋。

あちこちがギラギラしてて眩しいったらありゃしねえな。


それに…。


「よくやったのう、シエラ。」


赤毛の皇帝はその瞳も真紅に染まり、見つめ続けると大蛇のように飲み込んでくるような錯覚を覚える。


「はっ!陛下のご命令とあらば!」


そうしてシエラはことの経緯を事細かに説明しはじめた。

皇帝を名乗る女はつまらなそうに爪をいじりながら時折何故かヤリスの元に目をやっている。


「説明は以上です!」


シエラの説明が終わると皇帝は両手をパンッと鳴らして、少し全開姿勢になった。


「それじゃ、本題入るとするかのう。わしは回りくどいのは嫌いじゃ。ひかると言ったな?お主に1つ質問がある。」


俺にこうべをあげるよう促すと話を続けた。


「お主、この中の者どもと子を為したか?」


シエラを筆頭に室内にいた家来達がざわめきだした。


「な、なに言ってんだお前!?俺は童貞だぞおい!」


「それは誠か?ヤリス?」


「まあ私はもう孕んでるかも?」


「てめえ、乳首いじられただけで孕む奴がいるかボケェ!…ってヤリスと知り合い?」


「わ、私はもうデキてるかな!?あんだけ気持ちよかったし!」


「残念だが俺の鼻は生殖機能を持たないんだよ。」


「き、貴様皇帝陛下になんと無礼な!!」


「ひぃい!!」


「やめぬかシエラよ。」


「はっ!」


シエラが剣を鞘に戻す音が鳴り響くと謁見の間に静かさが取り戻された。


「ひかるよ、ワシを孕ませるのじゃ」


皇帝の言葉に立ち上がる俺が叫び出しそうなのに、今度は周りの誰も声をあげなかった。


「ど、どうして俺なんだ?」


「…。」


「皇帝さん?」


「お告げじゃよ。」


「お告げ?」


「そうじゃ。人族の街に生を繋ぐもの現るとき、世界は滅びの終わりを告げる、とな。」


「つまり、俺が救世主みたいな存在ってこと?いや、訳わかんないよそれだけじゃ!」


「そうか、異世界の住人であったな。」


皇帝は足を組み直した。


「この世界には男がおらんのじゃ。ただの1人もな。」


「え!?そんなバカな!?」


「15年前じゃ、何も代わり映えのしない晴天の朝じゃった。人族、獣族、魔族、その他の種族問わず男どもが一斉に死んだ。苦しむこともなく一瞬でな。我が父、前皇帝もな。」


すぐには言葉の意味がわからなかった。

そんなことは俺の常識の範囲では非常識すぎた。


しかし、隣でこうべを垂れるティナが地面に突きつけた拳を震わせる姿を見て、只事ではないことだけは感じることができた。


「そ、そんな…。キツすぎんだろ…。」


皇帝は再び足を組み直した。


「はぁ。やめじゃやめじゃ!湿っぽいのは好かんのじゃ!それでひかる、わしのモノになると言う話の続きじゃ!」


「いや、なんでそうなるんだよ!」


「まだ分からぬかアホめ!」


皇帝は立ち上がるとゆっくりと階段を降りる。


「ぬしは性を繋ぐもの、つまり種馬ということじゃ!わしの物となり、わしのために性の限りを尽くし、わしの血族を増やす種となるのじゃ!」


ひどい言いようだなおい…。


ただ状況は読めてきた。


つまりは、勝ち組になれってことか。


「分かった。その申し入れ、受け入れます。」


「そうかそうか!受け入れるか!」


皇帝シャルティアは高々と笑いながら玉座へと戻った。


「それでは、ワシのものとなったということで…」


ほんの一瞬であった。

謁見の間の入り口が塞がれる形で無数の影が現れた。


「陛下!一体これはどういう!?なぜ死霊の騎士団を!?」


「悪いのう、シエラよ。主には死んでもらうことにした。」

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