23

「うるさいな。人の心に入ってこないでよ。ばか」


精一杯強がってみせたのに、私の目からはポロポロと涙がこぼれ落ちた。その姿に、須田くんは押し黙る。

しばらくの沈黙ののち、須田くんがおもむろにハンカチを差し出した。


「……悪かったよ。お詫びにタピオカでも奢ってやるよ」


何かを察したのか、須田くんは変に明るくバンバンと背中を叩く。この期に及んでタピオカとか、いい加減にしてほしい。余計に梶先生を思い出してしまうではないか。あの思い出は綺麗なまま取っておきたいんだよ。


私は須田くんからハンカチを奪い取るようにして涙を拭い、精一杯の意地を張った。


「どうせ奢ってくれるなら焼肉にしてよね」


「おい、食い気かよ」


須田くんの呆れたような明るい笑い声が私の体を吹き抜けていく。


失恋をした。

先生が好き。

ううん、好きだった。


明日からもきっと大丈夫。

漠然とそう思った。


きっと。

うん、きっと。




【END】

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思い出のタピオカミルクティー あさの紅茶 @himemon

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