scene.49 悪役を邪魔する者 Ⅲ
「オーランドあなた……その髪はどうしたの」
「オーランド様!髪を切られるだなんてどうされたのですか!そんな報告は受けておりません!」
突然現れたシャーロットとケルシー
2人の第一声こそ挨拶であったが、俺の髪を見るや否やこれだ
「戦闘の邪魔になりそうだったんでさっき切ったんですよ」
「何故そのような……美しく長い髪は私たち貴族の命でしょう?何と馬鹿なことを……」
「切った髪は何処ですか!要らないならください!」
ていうか、ケルシーだよな?なんだあいつ……様子が変だぞ?
「そうっすね。まあ貴族なら大事にしたほうがいいんじゃないですかね」
長い髪、美しく手入れの行き届いた髪……
郷に入りては郷に従え、異世界に入りては異世界に従えと思い今まで大事にしてきたが、もう要らない
「オーランドあなた……なんですか?その口の聞き方は……それに……」
「離れなさいカラドリアの女!!オーランド様は私のものよ!」
いやいつからお前のもんになったんだよ。というか、本当にどうしたんだケルシー?
そもそもシャーロットとケルシーは何をしにきたんだ?
髪を切ったことの文句か?切ったのついさっきだし知ってるわけないか……
なんだ?マジで何しにきたんだ?
しばらく会わないうちに、ケルシーの目つきが変わっていた。
そんなケルシーは俺ではなく、俺の左側にくっついているマリアを射殺さんばかりに凝視している。こわっ……なんだ?アトワラス家はカラドリアと仲が悪いとかか?
「おーーーほほほほ!」
お、離れてくれた。
ケルシーの言葉に従ったのか、マリアは俺からゆっくりと身体を剥がし俺の前で仁王立ちして高笑いをし始めた
「何がおかしいのですかカラドリアの?」
「早く立ち去りなさい!どのような姑息な手を使ったかは知りませんが、金輪際私とオーランド様の邪魔をしないでください!」
「おーほほほ!おかしすぎて思わず笑ってしまいましたわ!」
いやいや、お前いつも笑ってんじゃん。
隣のリリィが力強くぎゅっと手を握り締めてきた……やはり、王女は怖いのだろうか。
その気になればラーガル王国を金の力でぐちゃぐちゃにできてしまえるようなカラドリア一族とは違い、リリィは平民だ。3ヶ月前に浴びせられた言葉が、彼女の中に恐怖と共に残っているのだろうか。
正直、この場からすぐに立ち去りたい……立ち去りたいが、シャーロットとケルシーが今更何をしに来たのか確認はしたい。もしまたリリィに文句を言いにきたのであれば、その時はもうラーガルとは手を切ろう。
手放したくはないが、鎧(プリドウェン)をマリアに譲り何処か違う国で生活の基盤を整えよう。だいぶ予定より早くなってしまうが、マリアはこの鎧のためなら金を惜しまない気がする。リリィと2人で生活していくくらいの金は手に入るはずだ。世界の事は主人公に任せよう。
「ですから、何がおかしいと聞いているんですカラドリアの!」
「そうです!金の力でオーランド様を手玉に取る悪魔め!」
「金?金ですって?この国の王家も貴族も大した事はないようですわね!おーーほほほほ!!」
「貴様!ラーガルを愚弄するのですか!!」
「許しませんよ!!」
「私とオーリーの間に金のやり取りなど一切ありませんわ」
「何を馬鹿な事を……そんなはずはない。カラドリアが意味もなく他人に近付くわけがない」
「どのような汚い手を使ったかはしりませんが、オーランド様があなたのような人間が隣にいることを許すわけがございませんわ!なんてはしたない!」
「おほほ……そう……貴女達、本当に馬鹿なのね」
「なんですって!!」
「ゆゆゆ許せない!!!」
シャーロットの怒っている顔は初めてみたし、ケルシーは血管がブチ切れんばかりに身体を震わしてる。クールビューティーのケルシーは何処に行ったんだ……すげぇ形相してんぞ。
何をバチバチと言い争ってるのか知らんが、この中に口を挟みたくはないし、無視して横を通り過ぎる勇気も残念ながらない。だが、王家とアトワラスがカラドリアと仲が悪いのは間違いないな。今日ここへ来たのも俺に用があったのではなく、マリアがターゲット……なのか?
「私とオーリーの間にお金は1ゴールドも流れておりませんわ。そんなもの………私たちの間にお金なんて要らないですわ」
「それが嘘だと――」
「お黙りなさいラーガルの王女!」
何かを話そうと口を開いたシャーロットはマリアの一喝で硬直した。
さすがにつえーな、カラドリアは……
こいつが親父さんとかお祖父さんに一言『ラーガル王国きらーいいらなーい』とか言えば多分潰せるんだろうしな。大陸に覇を唱えるラーガル王国の唯一の王女に黙れと言えるのはこいつくらいだろう……
「髪を切った程度で慌てふためき馬鹿にして、口が悪いからと叱責し……くだらない女」
「ななな!な!なんですって!!貴族たるもの!グリフィアたるもの!王家を支え私を支える者であれば、上に立つ者であれば当然のことではないですか!私が彼をただして何が悪いというのですか!」
「私はどの様なオーランド様でも大丈夫です!さあ!今すぐその女から離れてください!」
「おほほ……そこの女の方がまだいい事を言いますわ」
その女って……お前今めちゃくちゃ睨まれてるけどな。
ありゃやべぇよ…イっちゃってるよ……
なんかヤバイ魔術でも受けたのか?
薬でもやってるんだろうか…ケルシー、大丈夫か?
「……ラーガルの王女。貴女ここに何をしにきましたの?」
「そ!それ……は……」
そうそう、俺もそれが知りたかった。
「オーリーに会いに来たのでしょう?何か話があったのではなくて?」
「そ、そうよ!だから私はオーランドの言動に注意を!」
「ほーらお馬鹿さんですわ!おーほほほほほ!」
「何がおかしいのよ!!」
ケルシーはシャーロットに口をふさがれてしまった。
大丈夫だろうか、もはやあいつらがどうなろうがどうでもいいとは言え、何かしらの違法薬物やヤバイ魔術をしているのならそれはやめたほうがいい。6年後に主人公が会うまでは生きていてもらわないと困る。
「貴女……オーリーに気があるのでしょう?」
何を言うかと思って静観していると、マリアが変な事を言い始めた。
シャーロットが俺に気がある?
ないない、それはない。
今だってグリフィア家の嫡子である俺が髪をばっさり切ったことにキレてるし、俺がもう言葉や態度を取り繕うのをやめたらそれについても怒ってきた。シャーロットの中心はいつだって国だ。
国の益になるかどうか、グリフィアは使えるかどうか、リンドヴルムは役に立つかどうか。
王家の人間に恋愛感情なんてものが理解できるわけが無い。
オーランドが世界を盛り上げる為の悪役と言う舞台装置であるように、
シャーロットもまた、国を動かす為の装置にすぎない。
案の定、マリアに煽られたシャーロットは全身を真っ赤にして激怒していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます