scene.24 専属側仕えは固く誓う
オーリーは凄いやつだと思う
初めは同じ日に冒険者登録をしたのに、街の外で一度も見かけた事もないような、ひょろっとしたお金持ちの人間が自分より冒険者ランクが高いことに腹がたった。絶対にずるい事をしていると思った。
いつも身体から悪臭を放っているだけのゴミ掃除ばかりしてるゴミ野郎が、どうして毎日何十匹も魔物を討伐して何個も何個もクエストをこなしている私より冒険者ランクが高いのか、そんなの有り得ないと思った。
だけど、そうじゃなかった。
不正を暴いてやろうと後をつけてみたら、オーリーは本当にドブ掃除をしていた。
しかも、カッとなった私が殴りかかっても全然何も出来ないくらい次々に魔術が飛んできた。
無詠唱と言う奴なのだと思うけど、オーリーはドブ掃除をしながらも私から意識を離すことなく牽制してきた。同じ子供だと思ったのに全然違っていて、手も足もでなかった。
名前だけでも聞いてやろうと思ったのに、嘘の名前を教えられた。約束までしたのに……悔しかった。
だから怒って文句を言ってやろうともう一度突撃したら、話す事もできないくらいに水をばしゃばしゃかけられた。約束を破ったのはあっちなのに、何で私が酷い目にあっているのかわからなくて、手も足もでない自分が悔しくて、わんわん泣いてしまった。
それから聞いた話はとても為になった。
私は馬鹿だから、沢山魔物を倒せばそれが一番なんだと思ってた。
それが一番早くダンジョンに行く方法なんだと。
だけど、オーリーから聞いた話は全然違った。他の冒険者と何かが違う気がした。
自分のことを考えるのではなくて、冒険者ギルドを第一に考えろと教えてくれた。
どうして私がそんなに頑張っているのかを聞いたときも、笑われた時は悔しいと思ったけど……
そうじゃなかった
『ああ、俺は誰よりも強くなって1人で生きていくつもりだし、リリィだって誰よりも強くなって1人で生きていくんだろ?最終的にはお互い1人で生きていくにしても、ダンジョン攻略を開始するならしばらくはパーティーで行動したほうが効率はいいだろ?』
すごい!同じ事を考えている人がいた!
最強になるんだっていう夢を真剣に聞いてくれる人がいた!
私はとても嬉しくなった、だから即答した。
「オーリー、私達2人で誰よりも強くなるのよ!いいわね!」
よくわからないうちに凄い魔術を使う人とパーティーメンバーになれた。
でもそれだけじゃなかった。
「うわあ……オーリーってお金持ちだったのね!」
オーリーはとてもお金持ちで、食べ物も服も、寝る場所も、全部をくれた。
私と2人で早くダンジョンに行くにはこれが一番いいと、よくわからないけどオーリーのお世話をする仕事にもつけた。
朝と昼は冒険者ギルドの貢献度の高いクエストをこなして、夕方から夜は勉強まで教えてもらえた。
読み書きができなかった私にとっては夢のような時間だった。
「誰よあんたたち!」
いつものように裏口からお屋敷に入ろうとすると、とても綺麗な女の子が2人立っていた。
お姫様のようなキラキラの金色の髪の女の子と、ツヤツヤに輝く黒色の髪の女の子がそこにいた。
こんなに綺麗な子をみたことがなかった。
私と同じくらいの背格好なのに、私はこんなに……
『リリィおかえり、だけどダメだよそんな言葉遣いは』
だけどそれはどうでもよかった
「オーリー!帰ったわ!」
私にはオーリーが居るから。
だというのに……
『あ、あの…私が冒険者に登録したら、オーランド様はパーティーを組んでくれますか?』
黒い髪の綺麗な子が突然そんな事を言いだした。
それはダメ、絶対にダメ、こんなに綺麗な人がパーティーになったらきっと私は追い出されてしまう
「ダメよ!!!」
だから急いで否定した。
オーリーは私と一緒に最強になるって言ってくれたから、今オーリーがいなくなったら私はまた……
約束は絶対だとオーリーは言っていたから、きっと黒い髪の女の子に何か言ってくれると思った
『リリィやめろ。ケシーが怖がっているだろ』
『リリィ、この人はシャーロット様。このラーガル王国の王女様だ。そしてこちらのケルシー様もまた凄く偉い貴族のご息女様だ。こないだ勉強しただろ?専属側仕えになったら言葉遣いも少しずつなおしていこう、って。態度には気をつけるんだリリィ』
オーリーは私にはしてくれた事がないような言葉遣いで……綺麗で可愛い女の子を庇った。
悲しかった。悲しかったけど……仕方ないんだって思うことにした。
どうやらこの女の子は王女様ととても偉い貴族らしく、そんな人からパーティーを組もうと言われたのならもう私は要らないんだと思った。オーリーは凄い魔術師だし、きっと私じゃなくても……
それから王女様はゴミを見るような目で私を見て、捲くし立ててきた
『悪い事はいいません、そのような臭い娘とは早く手を切りなさい。オーランドの評判に瑕がつきますよ』
ああ……そうだよね。王女様がそう言うのならここまでなんだ
でも、そう思っていたのは私だけだった
『ロティー、そこまでにしてください』
オーリーは綺麗で可愛いお嬢様や黒髪の可愛い女の子ではなく、私を選んでくれた。
『そんな顔すんなよ、俺達は2人で最強になるんだろ?』
王女様たちが去っていった後、オーリーはいつも通りに戻っていた。
『ほら、ぼさっとしてないでこっち来い』
『うるっせ!ほら…』
そうして汚れて臭い私の手を強引に取って、何事もなかったかのように屋敷の中にいれてくれた。
私は馬鹿だから、オーリーが私を庇ってくれた理由はわからない。
私の手を取ってくれた理由もわからない。
だけど、
『急ぐ必要もねぇよ』
ぶっきら棒な態度で私の手を引っ張っているこの男の子は、絶対に私を裏切らないんだと確信した。
だったら私は強くなろう。もっと勉強もしよう。
今まで以上に努力して、オーリーと2人で最強になろう。
今日からは勉強も頑張って、甘えるだけの自分は卒業しよう。
今はまだ返せるものがなにもないけど、誰よりも強くなって約束を果たそう。
今はまだ頭が悪くて何もわからないけど、誰よりも賢くなって胸を張って隣を歩こう。
「うん……私、強くなる…なります」
今はまだわからないことばかりだけど、どうしてオーリーが私を拾ってくれたのかはわからないけど、どうして彼のような魔術師がパーティーメンバーにしてくれたのかはわからないけど、どうして彼が私に何も聞いてこないのかわからないけど、私が出来る事は最強になるという約束を果たす事だけだ。
『そうかい……頼りにしてるぜ』
だから、この約束だけは死んでも果たそう
リリアナ=フレスヴェルグは、オーランド=グリフィアと2人で最強になると誓おう
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