scene.20 仲間を効率よく育てるには



「うわあ……オーリーってお金持ちだったのね!」


 ギルドにてパーティー申請をした俺とリリィは晴れて仲間となった。

 俺の仲間になったからには最速で冒険者のランクをあげてもらう。

 その為にはリリィを俺専属の側仕えとして雇い入れるのが一番だと判断した。


 手を繫いで屋敷に戻った所、屋敷の中はしっちゃかめっちゃかの大騒ぎになってしまった。



 ◇ ◇ ◇



「それは構いませんが、本当に突然ですので驚きましたのよ?」


 クラウディアお母様に専属側仕えの打診をしたところ、秒で承認された。知ってた。


「はい。私の冒険者パーティーに加えようかと思いまして、これからは毎日教育や訓練を施していき鍛えあげていこうかと考えたのです」


「冒険者の……なるほど…貴方もそろそろその手の勉強をしていかなくてはなりませんし、専属側仕えの使い方は好きにすればよいのですが……くれぐれも第一子はリンドヴルムと成すように気をつけなさい。でなければあちらにも示しがつきませんし」


「ちっ!違います違います!!そのような事のために連れて来たのではありません!」


 街中で好みの貧民を見つけたから遊ぶために拾ってきたと思ってんのか!?

 貴族の価値観やべぇなおい!


「そうなのですか?いえ、それはどちらでもよいのですが、くれぐれもお気をつけなさいね」


「どちらでもよくはないですが……畏まりました。リリィはあくまで冒険者の仲間でございます」




 微妙な勘違いをされているが、リリィを屋敷に囲う事に成功してしまえばこちらのもので、衣食住をグリフィア家が提供できるので後は冒険者ランクをせっせとあげるために王都の掃除をするだけでいい。2,3ヵ月後にはリリィも<腰(ルンバーリ)>へとランクアップしていることだろう。


 少しだけ時間をロスしてしまうが、2ヶ月くらいならきっと取り戻せるはずだ。

それ以上に、志を同じくする前衛の仲間を見つけだせたことのほうがかなりのアドバンテージになる。

 どれだけ最速でダンジョンに挑めるようになったとしても、仲間探しに梃子摺ってしまえば意味がないし、いざパーティーを組むとなっても信用できる仲間かどうかを判断することや、どういう考えをもっているかを知っていくのには時間がかかる。


 その点リリィを見つけられたのはかなり幸先がいい。

こいつは絶対に上を目指すし、絶対に仲間を裏切るような事はしないだろう。

約束と言えば必ず守るような奴だし、約束を破られたら泣き叫ぶような子だ。

俺に襲い掛かってきた時の動きから戦闘技術は正直期待できないが、それだって今から鍛え上げていけばいい。


 利用するようで悪いが、リリィはゲームキャラじゃない。

父や母、王女やフェリシア達と違ってここにおいていく必要はない。俺がラーガル王国を離れて遠国に行く時になっても付いて来てくれるというのならパーティーメンバーとしてついてきてもらうつもりだ。



「ですので、リリィの部屋の用意をお願い致します。」


「ええ、ええ構いませんよ。」


「ありがとうございますお母様!」


 持つべき者は金持ちの親だな!



 ◇ ◇ ◇



「ここがわたしの部屋なのッ!?」


 それから屋敷の中の使われていない部屋を整理し、リリィにあてがわれた。


「ああ、好きに使ってくれ。リリィは一応俺の専属側仕えってことになってるが、やる事はそう多くない」


「なによ側仕えって!」


「なんだろうな、俺の身の回りの世話をする人、みたいなやつだけど―」


「何で私がそんなことしないといけないのよ!!」


 相変わらず話の途中でもお構い無しに割り込んでくるが、ごもっともだ。

俺の世話をするために、そんな事のために仲間になったんじゃないもんな。


「いや話は最後まで聞けって」


「わかったわ!」


 素直な所もいいところだ


「普通、側仕えってのはそういうお世話をする人間なんだけど、リリィは俺の専属側仕えっていうのになってな、何をやるのも何をやらせるのも俺の自由なんだよ」


「よくわからないわ!」


「あー……ん…ようするに今までとあんまり変わらないってことだ」


「わかったわ!でもそれならオーリーの家に来なくてもいいじゃない!なんでそのお世話する人にならないといけなのよ!」


 全然わかってないな。


「いいや、俺の専属側仕えになるとこの部屋に住めるし、ご飯も全部うちが出すから、リリィはこれからランクアップに専念できるんだぞ?いいのか?これからも毎日<長耳兎(チューピッシュオア)>を討伐し続けたとしても、俺と同じ<腰(ルンバーリ)>にランクアップするのは1年後とか2年後とかなんだぞ?リリィがそれでいいっていうなら側仕えの話は――」


「やだやだやだやだやだ!!!私達はパーティーメンバーだもの!私も早くダンジョンにいけるようになりたい!」


 首をぶるんぶるん振って全力で否定している姿はそれとなく可愛いな


「んじゃ俺の専属側仕えになるってことでいいな?」



「当然よ!最初からそう決めていたもの!」



 ガッツポーズを決めて格好良く言っているが、どの口が言うんだよ。




 こうして、ドブ掃除中に絡んできたわけのわからん少女リリィは俺の専属側仕えになった。


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