scene.13 ゲームの真ヒロインとは
「よし!今日から冒険者だ!!!!」
王女の呼び出しケルシーとの邂逅が終わった翌日、早速俺は王都の冒険者ギルドに来ていた。
本来9歳の子供が1人で来る場所ではないのだが、そうは言っても王都の冒険者ギルドだ。
子供相手に絡んでくるような粗暴な奴はまずいない。
そもそも『グランドフィナーレの向こう側』に出てきた冒険者ギルドはとても綺麗だった。
アニメなんかでみる酒場があったり丸いテーブルが並べられていたり、ごっつい兄ちゃんがたむろしていたりなんてものはなく。みんな何箇所かある受付に順番に整列して待ったり、壁際にあるクエストボードの前で仲間と相談しながら受注するクエスト探していたり、突然絡んできて殴りかかってくるような人は居ない。
冒険者ギルドは4階建てのかなり広い白亜の建物で、1階には何個かの受付カウンターがあって左右の壁には馬鹿でかい掲示板が設置されていてクエストが書かれた板、もしくは紙が貼り付けられている。
建物の外には直接2階にあがるための階段も設置されており、2階がクエスト終了を報告する為の受付と、魔物の素材買取をする場所。3階は昇格試験などの試験会場で4階がギルドの人達が執務を執り行っている場所との事だ。
俺だけではなく、子供の冒険者もチラホラいる。
冒険者の仕事は何も魔物を狩るだけが全てではないし、街のドブさらいの依頼だったり期日無制限の薬草採取の依頼だったり、作物の収穫の手伝いだったり、クエストの内容は多岐に渡る。
子供が出来るような依頼は確かに少ないといえば少ないが、それでもドブさらい1箇所やるだけでお金がもらえるようなので家の仕事の手伝いをしつつ、こういう所でお小遣いを稼ぐ子供もいるのだろう。
「あの!冒険者登録をしたいんですが!」
受付に並ぶこと数分、ようやく自分の受付が回ってきたので元気よく声を出したのだが
「あ、冒険者の登録でしたらあちらの壁際にある通路を進んでください」
受付のお姉さんとの会話は一瞬で終わった。
◇ ◇ ◇
受付のお姉さんに言われたとおり、壁際の通路を進んでいくと今度は筋骨隆々のハゲたおじさんがいた
今日始めて冒険者ギルドに来たが、俺はこのハゲを知っている!!
「お?坊主も冒険者登録か?」
「はい!ノインツ教官ですね?よろしくお願いします!」
「おう、俺の名前知ってんのか。まあそんなこたあいい、それよりそろそろ登録説明会が始まるから中にはいっちまいな」
「はい!教官!」
この世界に転生してから一番テンションあがったかもしれん。
このハゲおやじの名前はノインツ。
ゲーム『グランドフィナーレの向こう側』の主要素とも呼べるやり込み部分、ダンジョンパートの説明をしてくれる教官だ。
ゲームなんてこれ以外にやったことがない俺がどうしてこのギャルゲーをプレイする気になったのか、そして何故そんな俺が攻略ヒロインを変えながらも何週もこのゲームを遊んだのか、すべてはこのダンジョンパートが面白いからだ!
『グランドフィナーレの向こう側』は一部のゲーマーの中ではひっっじょうに評価が高かった。
それはギャルゲ部分の評価ではなく、豊富なやり込み要素のあるダンジョンパートがあったからだ。
一部ではローグライクゲームの最高傑作とまで言われているのがこのダンジョンパートであり、あまりに楽しさに時間を忘れて一晩中やってしまった人は数知れず、俺がこのゲームに出会ったのが受験が終わってからで本当よかったと生まれて初めて神に感謝したほどだ。
攻略可能ダンジョンはランダム生成のものが全部で9箇所
クエストの種類は10000種類以上で、バージョンアップでどんどん増えていった。
ダンジョンは初心者用の10層程度のものから、100層まである気が狂うほどに難しいものもあり、ローグライク好きにはたまらない、これさえあれば一生遊んでいけるような珠玉の一本がこのゲームだ。
ゲームのおまけでギャルゲーがついてくるとまで言わしめた作品であり、実際にギャルゲパートとダンジョンパートは然程関連性はない。一部ストーリーでコマンド選択バトルなんかがあるので、その時にダンジョンで主人公のレベルやステータスをあげたり、良いアイテムを集めておけば簡単に敵を倒せる、というメリットがあるくらいだろう。
しかし、最悪戦闘に負けてもなんやかやヒロイン攻略ができてしまうので、本当に意味はない。勝った時のボイスとかその後のヒロインとのイベントがちょっと変わるくらいだ。
そんなゲームの根幹とも言えるダンジョンパートで初心者から上級者までお世話になるのが、
ノインツ教官だ!
『ヒロインより話してる時間が長い』
『多分好感度一番高いのこの人』
『会いすぎて台詞覚えちゃった』
などなど、ヒロインよりずっと知名度が高いのがこのハゲたおっさんだ。
事実、俺は5人目のヒロインであるリリアナ=フレスヴェルグルートも隠しヒロインとやらのルートも攻略していないので、そういった意味ではこの2人よりもノインツ教官の方が好感度は高いのかもしれない。
そんな敬愛すべきノインツ教官に小さめの教室のような場所に案内された。
そこには数人の男女が集まっており、疎らに椅子に座っていた。
「さて、今日は8人しかいないが……まあいい。早速登録説明会を開始する」
そうして、俺がその部屋に到着するや否や、冒険者についての説明が始まった。
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