第二章 生と死の狭間で


次に目覚めた時、辺りは、薄暗かった。赤い夕日が病室の窓から見える。


『 赤い.........赤い目.........。』


鬼の赤い目を思い出し、秋彦は、顔に布団を被せ、身体を震わせる。

ガチャリと、ドアの開く音がして、秋彦は、布団から顔を出し、そちらを見た。ナース服を着た看護婦と、何故だか知らないが点滴を腕に刺した若い女が部屋へ入ってきた。

看護婦と女は、秋彦のベッドに近付いて来る。


「気分は、どう?もうすぐ夕飯だけれど、食べれそう?」


優しく、明るい口調で言う看護婦の隣、点滴をしている女は、顔色の悪い顔で、じっと黙って、こちらを見ている。

眉を寄せ、自分の隣をじっと見ている秋彦に、看護婦は、眉を寄せる。


「どうしたの?秋彦君。」


呟く看護婦に、秋彦は、静かに言った。


「看護婦さん…その人、誰ですか?」


「えっ…?」


秋彦の言葉に、看護婦は、自分の隣を見た。


「い、嫌ね、秋彦君。誰も、いないじゃない。」


クスッと笑って言う看護婦に、秋彦は、無表情で呟く。


「いるじゃないですか。腕に点滴を刺してる女の人…。」


それを聞き、看護婦は、一瞬、顔色を変えたがすぐに、クスクスと笑った。


「誰も、いないわよ。寝ぼけてるのね。夕飯、持ってくるわね。」


看護婦は、そう言うと、サッサと部屋を出て行った。

.........が、女は、そこに立ったままだった。


「何ですか?早く、自分の病室に戻って下さい。」


冷たい口調で言った秋彦に、女は、口をパクパクとさせ、何かを言っている。

その声は、小さく何を言っているのか分からない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る