第二章 生と死の狭間で


五年前の春。中学校の入学式の日。

秋彦は、信号無視の車にはねられた。


身体が宙に舞い、そして、スローモーションのように落ちていった。

硬いアスファルトの上に叩きつけられた瞬間、秋彦の意識は、なくなった。


気がつくと、秋彦は、暗いトンネルの中を歩いていた。暗くて、寂しいトンネルの中、秋彦は、トボトボと歩いている。


『 俺…どうしたんだろ?ここは、どこだろ?』


ぼんやりとする頭で、そんなことを考えていた。


『 俺は、どこに向かっていたんだろ?.........そうだ!学校に行かなきゃ。』


秋彦は、そう思うと、慌てて、トンネルの中を駆けて行った。

やがて、出口が見え、トンネルから出た秋彦は、目の前の光景に、今までに感じたことのない、何とも言えない気持ちになった。


一面の花畑。色とりどりの花が咲き乱れ、小鳥のさえずりが聞こえる。

花畑の横には、川が流れ、サラサラと水の流れる音がする。


「なんて、美しいんだ。」


あまりの美しさに、しばらく、立ち尽くしている秋彦の側に、一人の男の子が駆けて来た。

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