第一章 彷徨える魂


昼休み。秋彦は、屋上へ来ていた。屋上のフェンスに向かい、声を掛ける。


「このLINE、君ですか?」


スマホの画面をフェンスの方に向けながら、秋彦は、言う。


「困るんだよね。こんなことをされても。」


やがて、フェンスに人影が浮かぶ。学生服を来た男の姿。制服が今のと違うのは、以前、ここに通っていた学生か.........。


暗い表情をした男は、ゆっくりと秋彦の方に顔を向け、闇のように黒い目で見つめる。


「.........恨みを晴らして下さい。」


呟く男に、秋彦は、腕を組むと、軽く息をつく。


「だから、地獄少女じゃないって。」


「えっ.........?」


眉を寄せ見つめる男。どうやら、地獄少女は、知らないらしい。

秋彦は、フッと笑う。


「そんなことは、どうでもいいけど。恨みなんて晴らせないよ。俺は、ただ、視えるだけだから。」


「.........あいつだけは、許せない。あいつのせいで、僕の人生は、めちゃくちゃだ。」


男の話を聞きながら、秋彦は、瞳を閉じた。


「あいつって、田中のこと?イジメられたの?」


「イジメという生易しいものじゃない。生き地獄だ。」


「でっ、本当の地獄に行っちゃったんだ。」


秋彦の言葉に、男は、眉を寄せ、首を傾げた。

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