第一章 彷徨える魂


いつものように、学校へ行く通学路を歩いている秋彦の元に、同じクラスの松野 華奈(まつの かな )が駆けてきた。


「おはよぉー!アッキー。」


元気な声で、肩をポンと叩いてきた華奈をチラリと見ると、秋彦は、ため息混じりに、こう言った。


「相変わらず、元気だね。だけど、アッキーは、やめろ。」


少し不機嫌な秋彦に、華奈は、明るく笑った。


「元気があれば何でも出来る!ってね〜。」


「猪木かよ。」


呆れて呟く秋彦を見て、華奈は、えへへと笑う。


「アッキーは、朝から不機嫌そうだけど、何かあったの?」


「何で不機嫌だって分かったんだ? 」


「分かるよ〜。顔を見ればね。私とアッキー、何年の付き合いだと思っているの?もう5年の付き合いだよ。」


秋彦と華奈は、中学に入学した時から、何故か不思議と同じクラスだった。


「高校まで一緒だとはね。」


「何?その言い方。迷惑なわけ〜?」


顔を覗き込む華奈から、フイッと顔を背け、秋彦は、小声で言った。


「迷惑というか.........変わってるなって。」


「えっ?何で?」


何かを言おうと口を開いた秋彦は、少し考え、口を閉ざした。


そんな秋彦に、華奈は、クスッと笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る