第13話 澪奈の部屋お片付け大作戦(後編)
棚に並べられていた文庫本、その他特級呪物の数々が、本棚そのものとともに僕と澪奈の方へ倒れ込んでくる。
「危ない――っ!」
逃げる時間も、そして残念なことに足の踏み場も全くなかった。危ないっ、と叫んだ僕は恐怖のあまり固まっている澪奈の上に覆い被さり、落下してくる
「だめだよっ……お兄ちゃぁああんっ――!」
流石にキャラ崩壊している妹に、僕は最期の笑みを浮かべた。
「ふふっ……その方が可愛いと思うよ、澪奈」
「な、何言ってるのっ!?」
ぎゅっと目を
「………………あれ?」
だが、いくら待っても覚悟した衝撃はやって来ない。恐る恐る眼を開けると、後ろの方で溜め息をつく音がした。
「もう……妹を押し倒して、いったい何をしようとしてたのかなぁ、お兄ちゃん?」
「ゆ、結衣花さん……!?」
廊下に置いてあったはずのモップをつっかえ棒にして、エプロン姿の結衣花さんが本棚を押さえてくれていたのだ。
「孝樹君がシスコンなのはともかく、中学一年生に手を出すのは良くないと思うけど」
「シスコンじゃないし手を出してもないからっ! ……って、そうじゃなくてっ」
「そうだよ結衣花さん。お兄ちゃんは悪くない」
「ふふ、冗談だって――って今の澪奈ちゃん!? 普通に喋れたの!?」
珍しく本気で驚いている結衣花さんから、妹はぷいっと顔を背けた。耳の先がほんのりと赤く染まっている。
「別に……わたしだって。それに……」
「それに?」
「お兄ちゃんが……」
「孝樹君が?」
「こ、この方が……」
「この方が?」
「か、かかっ、かわ…………何でもないわっ!」
「あ、戻った」
結局いつもの中二病モードに戻ってしまった澪奈に、ニヤニヤしている結衣花さん。どうやらさっきのやり取りは丸聞こえだったらしい。まったく、サディスティックな人だ。
それはさておき、こうして年相応に照れる澪奈も可愛いなと思った僕であった。そして、彼女が僕を自然に
***
「あーあー、これは大変だね……」
「くっ……我の聖なる
「それ、意味
床に散らばるオタク
辺りには舞い上がったホコリがもうもうと立ち込めており、眼がかゆくなってきそうである。澪奈は何度もくしゃみをしている。
「大丈夫か、澪奈?」
「うむ……我が聖なる浄化の力を以てすれば、この程度――くしゅんっ!」
「あー、これは掃除しないとだな」
「そうだね。この機会に、徹底的に……っ!」
この前買ったばかりの超強力コードレス掃除機を早くも持ってきた結衣花さんが、もの凄く楽しそうな表情でガッツポーズしている。
「結衣花さんって結構綺麗好き?」
「そうだねぇ……
一人でやれば大変なことでも、三人一緒に力を合わせてやれば話は別だ。澪奈が変なポーズを取りながらうろうろして何やらブツブツ詠唱しては落ち込んでいる間に、僕がフィギュアやその他の呪物の残骸をはじめとする大きめのゴミを拾い集め、結衣花さんが細かなホコリを掃除機で一気に吸ってゆく。
「おおー……こんなに広かったっけ、この部屋」
「部屋の大きさは僕の部屋と同じなんだもんね。物が多すぎて忘れてたけど」
「お主たち……我の部屋を、こ、こんなに……っ!」
夢中になって片付けた結果、澪奈の部屋は一時間ほどで見違えるように綺麗になった。ピカピカの床、美しく揃えられた本棚。まるで新居みたいだ。数々の中二病コレクションを
「ご、ごめんなさい澪奈様っ」
「悪かった……せっかくだから綺麗にしようと思って……」
「くくっ……我が
慈愛の
「
「澪奈様……」
それから、妹は前髪の毛先をくるくると
「お兄ちゃん、それに結衣花さんも……あ、ありがとう」
***
このたび、各キャラクターの簡単な紹介文及びキャラ画像を載せた近況ノートを投稿しました! 若干のネタバレを含みますのでご注意ください。どの子も可愛く仕上がっていると思います……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます