カロンさんの剣

カロンさんが駆け抜けると、赤色に発光する雲雀が通った剣の軌跡が揺蕩う。

ホーリーナイトであるカロンさんの愛刀雲雀は、普通の剣に比べ、格段に高い魔法付与親和性を誇る。

ホーリーナイト専用なため、常時聖属性は付与されているのだが、カロンさん特注の雲雀は、最大で全属性付与が原理上可能らしい。

要は、すごい剣だってこと。

ただ勿論、そんなすごい剣だから絶対剣のカロンなわけではない。

そんなすごい剣を、すごいカロンさんが使うから絶対剣なのだ。


「グガァッ」

「グルルル」

雄叫びをあげながら、丘の上からカロンさんを見下ろすのは、狼型の魔物、5匹の群れだった。

「まとめて消してあげる」

カロンさんは姿勢を低くして刹那、先頭の狼に肉薄する。

ジュワッと、液体が気化するような音が聞こえると同時に、狼の首が宙を舞う。

切断面から流れ出る血液は空中で全て気化し、体も灰になって消える。

「すごいです。一欠片も残っていない」

戦場を華麗に舞うカロンさんを見て、シュミカちゃんが小さく呟く。


宣言通り1分後。

戦闘を思わせる鮮血すら見当たらない、綺麗な元の丘が広がっていた。

「イオ、炎を消してもらえるかしら?」

「あ、うん」

私たちの所に戻ってきたカロンさんの剣の上をイオちゃんが右から左に手を翳すと、雲雀は元の輝かしい鋼色に戻った。



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