楽しいピクニックのために

「…」

丘の裾野に到達したところで、カロンさんが左手を剣の鞘を掴み、右手で私たちを静止させる。

「どうしたの?」

「魔物感知に反応が有るわ」

カロンさんの一言で、イオちゃん、シュミカちゃんに周りの空気が、一気に張り詰めたように感じる。

魔物、久しぶりな気がするな。

「アヤさんは私とイオさんの間から離れないでください。敵の攻撃で死なれてしまっては困ります」

シュミカちゃんが杖を腰のホルダーから引き抜いて右手で構えながら言う。

「わかった、任せたよ二人とも」

「任せて」

イオちゃんもシュミカちゃんもとても頼もしい。


「カロンさん、敵の数はどのくらいですか?」

「3、いや5かしら」

シュミカちゃんの問いに、カロンさんは目を閉じながら答える。

「でしたら私が広範囲魔法で一掃します」

「いや、丘でピクニックをするなら、大規模な魔法は避けた方がいい」

息巻くシュミカちゃんにイオちゃんが諭すように優しく言う。


「でしたら、どうしましょう…」

「こう言う時の為の、絶対剣のカロンよ。少しは頼って欲しいわね、シュミカ」

カロンさんが愛刀、雲雀ひばりを引き抜きながら堂々と答える。

「す、すみません。魔法攻撃しか頭になくて…」

「なら剣の力を見せてあげる。イオ、雲雀に炎魔法を付与して」

「わかった。ファイア」

イオちゃんが魔法式を唱え雲雀に手を翳すと、雲雀は赤色に激しく発光する。

「あんまり長くなると雲雀に負担がかかる。早めに済ませて」

「ありがとう、イオ。これなら1分もいらないわ」

カロンさんは、イオちゃんに礼を言うと、丘に向かって勢いよく走り出した。

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