ブレッドにする?
「じゃあどこから行く?」
「とりあえず、一番遠い小麦屋からかな。他の店に回る間は私が持っておくわ」
カロンがイオに提案する。
「助かる」
「任せなさい。豪腕のカロンとは私のことよ!」
カロンは意気揚々と胸を張って言う。
誰がそんなこと言ってるんだが、と言った顔でイオは苦笑するが、当のカロン本人は、全く気がついていなかった。
「小麦粉、20キログラムお願いします」
「はいよ。お、誰かと思えば灼熱嬢のイオさんに絶対剣のカロンさんじゃねえか。安くしとくよ」
「それは嬉しい。ありがとう」
小麦屋の店主は気さくに笑うと、店の奥から大きな業務用の小麦粉を肩に担いで戻ってくる。
「ほらよ、小麦粉20キログラムで、30ソーラだ」
「はい」
イオは、以前に東洋市で買った巾着と言う小さい袋から、ソーラ金貨を30枚取り出す。
「毎度あり!」
「こちらこそまたよろしく頼む」
カロンとイオは店主に向かって小さく頭を下げ、店を後にした。
「私も持つよ」
イオが小麦粉を両手で担いだカロンに申し出るも、カロンは首を横に振る。
「私が持つから大丈夫よ。イオは、おばあちゃんだからね」
「なっ!? またわしをおばあちゃん呼ばわりしおったな!」
イオは頬を膨らめてポカポカとカロンを叩くも、重たい小麦粉を持っているにも関わらず、カロンはびくともしない。
「おばあちゃんって呼ばれるのは気にするのに、驚いたり緊張したりすると、標準語が崩れてしまうのは変わらないのね」
「うるさいわい! 余計なお世話じゃ!」
イオはプンスカと、大股で足早に歩き出した。
「悪かったわよ」
カロンは小さく笑いながら、歩き出したイオの背を追った。
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