第10話 June Bride

エリのお友達の結婚式。


僕はカメラマンを頼まれて一緒に参加したね。


花嫁さん。綺麗だったね。幸せそうだったね。


僕たちはあんな風になれる日が来るのかなぁ。


6月。南青山のカフェ。結婚式の2次会。


この月、エリは、ちょっとした躁鬱状態だったのかもしれない。


私に会うと、2回に1回は落ちた。


でも、昼間は元気だし、ポジティブで、アクティブ。


そして、ベットの中での僕たちは、どんどん相性がよくなった。


僕たちは、お泊りすれば必ず、セックスしてた。君は普通の女の子だった。


でも、僕は違う。だって。若くしてセックスレスになったから。


お互いにセックスは久しぶりだったから、最初は遠慮があった。


でも、3ヶ月も経つと、互いの特性を理解し合えるようになったし、


気持ちが全然違う。気持ちが入ると、セックスは何倍も気持ちがいい。


二人で新しい領域に入れた。それは、人生にとって素晴らしい経験の一つ。


だって、それこそ、二人でないとできないことだから。


エリは、僕に対して、全幅の信頼を寄せていた。だから、どんな大胆なことも


受け入れて行ったし、20年分の思いを埋めたがっていた。


性欲だけじゃない。独占欲もあったと思うし、何より、この失われた20年間を


彼女は貪欲に取り戻したがっていた。


だって、もし、二人が20年前からずっと付き合っていたら、


エリの人生は全く違ったものになっていたはずだから。


でも、僕は、そんな言葉は言えなかった。


だって、僕には娘がいたから。もし、エリと一緒になってたら、


娘の存在はなかった。娘の存在を否定するようなことは、父として決して口にできない。


それが、僕とエリとの大きな違いだった。


僕がエリに伝える言葉は、


「昔からずっと好き」


それだけ、無責任に、未来のこととか言えない。


できもしないことを言うわけにはいかない。


僕はエリに嘘をつきたくない。


昔からずっと、エリにだけは正直でいたから。


言わないことは嘘じゃない…。

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