第7話 Rembrandt

上野、国立西洋博物館で、レンブラントが展示されている。


エリと僕はそれを見に行った。


エリと僕の仲はだいぶ近づいた。

エリは遠慮なく僕に物を言うようになったし、

そして、大いに依存した。

メールも長文が打てるようになった。


論理的思考が少しずつできるようになった。

一方、感情がコントロールすることが難しくなっていた。


彼女は、自分と向き合い始めたのだ。


それは、避けては通れない道だった。


エリの不調は、24歳で母親を亡くしたころから始まった。

もう6年になる。


僕に再会する直前が一番ひどかったらしい。

スーパーで買い物をしていると、フリーズしてしまう。

涙が出るが、声が出ない。

なぜ、家族は自分を放って置くのか、

それが自分にとって危険なことだという認識。


僕に再会してからも、最近のエリの言動には、矛盾点が出始めていた。

「相手に誠実であろうとしたことがない」

「相手に好きかどうか確認し続ける。相手に捨てられないように媚びる一方で、相手にどんなことをしても大丈夫」

「不倫や浮気、二股ということが汚点であるとは考えない」


言うならば、それは「メンヘラ」という奴だ。

僕は、メンヘラを相手にしている。

違う。僕は幼馴染を助ける。そのために一緒にいる。

僕が幸せになるのは、当分先。

まずは、エリを回復させなければならない。


この兆候は、回復するためには必要な過程だと僕は知っていた。


だから、我慢できた。

エリは一度、僕といる時に、過去の話を始め、

考え込み、一点を凝視し、2分以上全く動かず、やがて意識を失った。

そういう時のエリは、話の要点が全くまとまらない。

時間軸に沿って話をするだけで精一杯なのだ。


レンブラントの絵画は美しい。

僕はこの写実的な絵が好きだ。

フェルメールなんかも。


エリに沢山の美しいもの見せてあげる。

それが大きなリハビリの意味があることも僕は知っている。

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