第13話 波

エリ、君のそばには僕しかいなかったね。

もっと前から、一緒にいられたらよかった。

本当の意味で、君を幸せにしたかった。



彼女の容態は一進一退だった。


堕胎、ドラッグ、死別、自殺未遂、を原因に、摂食障害、無月経、パニック障害、自律神経、膝痛と様々な症状がある。


彼女の欲求は、ただ一つだった。

ただ、愛されること。


なぜ、旦那を「ヤツ」と呼ぶのか知らない。

なぜ、実家に帰っているのか知らない。

なぜ、自殺未遂をしたのか知らない。

なぜ、堕胎をしたのか知らない。

僕は何も聞かない。

エリが話したいなら聞く。


エリにとっての僕が特別なのは、幼馴染だからだった。

僕は社会的な地位もないし、高給取りでもない。

見た目だって普通だし、これといった特技もない。

だけど、エリのことを受け入れることに関して、僕以上の人はいない。


もう、エリは夜だけじゃなく、昼間も落ちるようになっていた。

旦那との離婚協議がうまくいっていない。

そして、身体のこともある。


なによりも、僕との未来を本気で望み始めたことで、

今までとは、自分自身への見え方が変化していた。

自分を変えようとして、それが上手く行かないことに苛立っていた。


僕たちは、この月、ほとんどセックスをしなかった。

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