10話.[自由なグループ]

「へへへ、もう出て行かせないぜ」


 呼ばれたから行ってみたらこの結果だった。

 彼女は私が部屋に入るなり部屋の扉の鍵を閉めた。

 ……独り占めできるのって、されるのってこんなに嬉しいことなんだなあ。


「さてと、なにをしてあげようかなあ」

「座ってもいい?」

「あ、うん、どうぞ」


 当たり前のように彼女の部屋にいるというのもちょっと前からすればありえないことだ。

 変わろうと少しでも努力できたからこそこうなれた。

 まあほとんどは鈴と香帆の存在のおかげなんだけど。


「やっぱりやばいことをやっちゃいそうだから香帆を呼ぶね」

「うん、分かった」


 関係が変わっても三人で変わらずに盛り上がりたいという気持ちがあった。

 鈴が中心にも香帆が中心にもなれるそんな自由なグループ。

 一緒にいたかったら一緒に過ごして楽しめるそんな関係。

 どちらかが欠けても駄目だった。


「はぁ、私はなんでここに呼ばれたの?」

「三人で一単位だからっ」

「ま、いいけど、転ばせてもらうわよ」


 こちらは飲み物を飲ませてもらう。

 先程までお母さんのお手伝いをしていたから喉が乾いていたのだ。

 あと、喉となると近くに口があって、そうなるとこの前のあれを思い出して駄目になるから香帆を呼んでくれたのは正直に言って感謝するしかないぐらいで。


「恵、ちょっと横に転びなさいよ」

「鈴、いい?」

「うん、いいよー」


 転ばせてもらったら自分の部屋のベッドとは少し違った。

 これが所謂低反発素材、というのだろうか?

 私としては柔らかいものの方がいいかもしれない。

 ――って、偉そうか、なにを考えているのか。


「恵、今度のテストは自信あんの?」

「うーん、またふたりにお世話になるかもしれない」

「分からないなら頼ればいいわよ、鈴と私で赤点とか絶対に取らせないから」

「ありがとう」


 そういう点でも恵まれている。

 自分が不幸だとか考えたことはマイナス思考をしがちだった過去の私でもなかったわけだけどね、寧ろ幸せな存在だったと言ってもいいぐらいだ。


「私も転ぶー」

「ぐぇ!? な、なんで私の上なのよ……」

「これなら恵も嬉しいかなって、私と香帆を一度に味わえるからね」

「食べ物じゃないんだけど……」


 うん、やっぱり三人でいるときも楽しい。

 ふたりでいるときはドキドキしがちだから疲れてしまうこともあるし。


「恵、鈴が嫌になったら私が相手をしてあげるから」

「うん、ありがとう」

「ちょいちょーい! 浮気発言だよそれっ、香帆も余計なこと言わないでっ」

「はははっ、分かったわよっ」


 おお、言い合いをしないようになっている。

 これだけで私的には大満足だった。

 このまま三人で仲良く居続けられたらいいなあ。

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57作品目 Rinora @rianora_

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