第2話 そんなこと

ええ、


わかってたわよ


そんな答えが


返ってくるのを


そうね


まだ忘れられないよね


あんなに愛した人を


失ったんだものね


まったく


タイミングが悪かったわね


だって


言いたくても言えなかった事を


いつ伝えられるのか


ビクビクして待っていたんだから




「先輩、私と付き合って下さい」


この一言をね


こんな事言っちゃ申し訳ないけど


あなたがあの人と別れたって事を


聞いた時に嬉しくなっちゃった


あんなにお似合いのカップルで


この私でさえ祝福していたのにね


もちろん


罪悪感もあったわ


あなたの傷心につけ込んで


あんな事を言うのも


でも私にだってチャンスは欲しいよ


こんな私だってさ


たまたま一緒になった帰り道


地下鉄の改札に入って


別々の方向に別れる時に


「今しかない!」って


思っちゃったのよね




ああ、


なんて私バカなんだろ?


もっとちゃんとしたところで


ちゃんと伝えれば良かったのに


そしたらあなたの


答えも少しは違ってたのかな?


ついそんなことに期待しちゃう


やっぱり私もバカよね




でも、それを言ったら


あなたもバカよ


なんであの人に


そんなに惚れ込んじゃったの?


どうせ叶うはずのない


恋だと分かっていたのに


二人がうまくいったって聞いた時には


信じられなかったわ


そんな事もあるのね


だから


私にも


そんな事があったって良かったんじゃない?


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