第6話 再編成

 「小田原評定」昔あった日本という国の故事である。

 連合軍の最前線のテントでは、まさしく、この言葉通りだった。毎日のように会議が開催されるが、結論には到らない。

 「それでは、また明日と言うことで。」

 いつも作戦会議の進行を務めるガザ大佐の口癖となっていた。

 あれから1ヶ月、何も打開策がないまま、ブラッドリー大佐の到着を待つことになった。

 連合軍の現場の士気は、落ちていた。2つの小隊を失い、無策の1ヶ月。全体では、優勢に戦っている連合軍であるが、この戦場のみは、違った雰囲気があった。


 ブラッドリー大佐の最初の仕事は、部隊の再編成であった。

 第一小隊と第二小隊は、欠番となった。残りは第三小隊から第八小隊まで。

 アーサーは、パイロットとして、第八小隊に組み込まれるはずだった。ただ、第二小隊の生き残りであるウィルソン中尉が、復帰するためバトルアーマーと所属を失った。


 新しい指揮官であるブラッドリーのテントに、勢いよく飛び込んできた者がいた。一見して、技術者であることは、わかった。端末機器を小脇に抱えて、忙しそうにメガネを直しながら説明をした。

 「この1ヶ月、ずっと待たされているのです。実戦投入が。これでは、現場に来た意味がない。このバトルアーマーは、革命なんですよ。」

 資料の入った情報端末を大佐に渡しながら、絶叫している。ジョー・タニハラと言うのが、技術士官の名前だ。

 「わかった。私もこの話は聞いていない案件だ、少し時間をくれないか。」

 少し落ち着いた様子のタニハラは、渋々、持ち場に戻った。

 

 新しく自分の下で働くバーニー少佐を呼んだ。

 「少佐、この試作機の案件は、知っているかい?」

 「これですか、パイロットに試作機の搭乗テストをお願いするのですが、最初は、みんな喜んで協力しようとするのですが、結局、みんな断ってしまいまして。」

 「なぜ、新型だろ?」

 「それが、あまりにも違い過ぎるようなんです。システムが。習熟したパイロットほど嫌がっているようです。」

 「そうだ、一人パイロットがあぶれたな。」

 「シナプス少尉ですか?」

 大佐の頭の中に、一緒に同行したアーサーの姿が思い浮かんだ。

 「あ、彼か。」

 「お知り合いですか?」

 「まあ、同じ便で移動してきた。」

 試作機のスペック表を見ながら、大佐は話を続けた。

 「このスペックが本当なら、量産機は足元にも及ばない。」

 「試作機ですから、なんとも言えませんが。」

 そのバトルアーマーには、識別番号がついている。それとは別にコードネームがついていた。その名は、ペガサス。

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