第5話 それぞれの立場

 挟撃された別働隊の運命は、もっと悲惨なものだった。二機は、大破。一機は、何とか逃げ延びて、自陣まで戻ったが、バトルアーマーは、修復が困難なレベルだった。


 連合軍側の報告書では、バトルアーマー五機消失。一機中破。捕虜三名、生死不明二名、軽症一名と記載された。

 この結果に、方面司令官のベーカー准将は、愕然とした。この後、積極的な攻撃を支持するものは、連合軍側には、いなくなった。


 「尋問しますか?」

 シュワルツは、声をかけた。シュワルツは短髪で、シュナイダーより肉付きがよく、がっしりしていた。年もシュナイダーより少し若かった。軍人らしいのは、シュワルツの方だった。

 「あまり聞き出すこともないだろう。条約もある、捕虜は丁重に扱うように指示してくれ。」

 「わかりました。」

 パイロットが重要な情報を持っていないことをシュナイダーは、経験から知っていた。彼らは、機械を動かすスキルはあっても、作戦立案には、関与していない。


 今までは、小競り合いを繰り返していたが、それ以降、連合軍は貝のようになって、防御を固めた。

 「無理に攻める必要はない。」

 シュナイダーの言葉だった。


 地球においては、補給に難しい帝国である。無駄な戦闘は避けたい。もともと宇宙の民だある帝国は、独立が目的だった。独立の発端は、重い税金だったと聞いている。属領のような立場であった。コロニー群の民の怒りは、頂点に達した。警備をしていた軍の指導者が、民衆を焚き付けて帝国を誕生させた。

 正式名称「ブライメル帝国」、「帝国」と呼称している。各国の属領であったコロニーがまとまって、帝国を形成した。彼らの自慢は、その技術力であった。元々は、宇宙作業機械の延長であったはずの物が、バトルアーマーになった。さらに改良が施され、戦争用に転用された。

 開戦序盤は、新しいジャミング技術とバトルアーマーの活躍で、戦争を有利に進めた。独立の枠を超えて地球にまで領土を求めた。資源獲得がその理由ではある。


 連合軍は、地球の国々が帝国に対抗するために作った組織であった。そのため、まとまりが無く、また不慣れな宇宙で、敗北を続けた。そして、地球侵攻を許すことになった。さすがに、自分達の領土が危険に晒されると、国々はまとまり、対抗するためのバトルアーマーの開発も進んだ。


 連合軍のバトルアーマーの登場で、帝国の地球での戦果は、オセロの用にひっくり返った。あっという間に、帝国の領土は減った。その一部に、シュナイダー達は、立っているのである。

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