第4話 戦闘開始

 ベイカー准将が立てた作戦は、オーソドックスなものだった。夜間に敵を急襲して壊滅する。そのために、第一小隊と第二小隊が作戦に参加させた。第一小隊が正面で戦い、第二小隊は、山を迂回をして右側方みぎそくほうから攻撃を仕掛ける。


 情報を得たシュナイダーは、兵達を移動させた。すでに、野営地は、もぬけの殻である。情報端末機器を眺めながら、地形を観察していた。既に晩秋であり、辺り一面の木々の葉は、黄、赤に色づきはじめた。

 「正面と山を迂回して攻撃だろうな。」

 シュナイダーの言葉を聞いた副官のシュワルツは、すぐに反応した。

 「どうされますか?」

 「そうだな、正面の敵は、少し応戦したフリをして我々の野営地に、ご招待しよう。空になったテントに、爆弾を仕掛ける。山を迂回すると考えられる別働隊は、こちらが挟撃する、と言うのはどうだろう。」

 「別働隊がない場合は?」

 「移動させて正面の敵の退路を断つ。」

 シュワルツは、前任者と比較しても優秀なことは、すぐわかっていた。赴任して間もないのに、すでに地形を理解している。この人なら、きっとこの状況を打開してくれる、彼はそう考えた。

 「正面の部隊の相手は、誰に任せますか?」

 「それは、私がやろう。すでにバトルアーマーも準備済みだ。」

 シュワルツは、赤く塗られた二型のバトルアーマーを思い出した。

 「指揮官、自ら出撃ですか、危険です。」

 「帝国は、人がいない。何役もこなさないといけないだろ。」

 「しかし・・・」

 指揮官自らがバトルアーマーに搭乗するなど考えられなかった。シュナイダーは、綿密な計画をシュワルツに託した。簡易に建てられた日差しを遮るだけのテントから出てバトルアーマーに向かった。


 暗視カメラを除きながら帝国軍の小隊の指揮官が独り言を呟いた。

 「いつ、通るんだ。敵さんは。」

 すでに、深い時間だ。挟撃をするために、森の中で息を潜めている二型が三機。通常、三機で小隊を形成するのが、この世界のセオリーだ。

 しばらくすると、機械音がした。バトルアーマーが歩行する音だ。

 「せめて迷彩色にしてくれよ。白のままじゃ、丸分かりだぜ。」

 通り過ぎるバトルアーマーを、観ながら小隊長が、さらに呟いた。


 正面は、すでに戦闘に突入していた。赤く塗られた帝国軍のバトルアーマーが単機で連合軍の小隊と戦っていた。噂は、すでに広まっていた。

 「まさか、赤い弾丸?」

 手持ちのミサイルランチャーで、狙いをつけるが動きまわる赤い目標ターゲットには当たらない。赤い機体も、バズーカで応戦してきた。

 敵が一機なら噂の赤い弾丸だろうが蹴散らせる、と考えていた。しかし、心理的な圧力プレッシャーは、半端ではない。歴戦の勇者と知られる男だからだ。

 「くそ逃すか。」

 後退した敵機を追った。


 コックピットでシュナイダーは呟いた。

 「食いついたな。」

 彼は、非常に巧みだった。攻めては、引き。引いては、攻めた。

 「三名樣、ご案内だ。」

 元の野営地の場所に、連合軍のバトルアーマーはお引き出された。


 「まずは、敵地の殲滅が優先だ。」

 野営地に向けてミサイルを撃ち込むと同時に、大きな爆発が起きた。

 「なんだ」

 仕掛けられた爆弾が誘爆したのだ。三機は身動きがとれなくなり、自立して立っていることも困難になった。

 爆発が終わった時には、敵に囲まれていた。バトルアーマーから降りることを強制されていた。

 「丈夫なコックピットのおかげで命拾いしたな。」

 そう呟いたのは、シュワルツだった。

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